【寄稿】中共ドローン軍団に対抗する最適解とは

2024/07/10 更新: 2024/07/10

中国製の軍用ドローンが世界中で猛威を振るっている。台湾の兵士に嫌がらせをし、制裁を逃れるためのキットとしてロシアに送られ、さらには風力発電のタービンとしてリビアの軍閥に輸送された。今やドローンは世界中の戦場で欠かせない存在となっており、中国での大量製造と相まって、米軍とその同盟国にとって頭痛の種となっている。

リビアに無断で送られた無人機はイタリア税務署と税関職員に摘発された。リビアは内戦のため、国連の武器禁輸措置下にあり、中国共産党(CCP)が輸送品目を偽装したのはそのためである。イタリア当局者によると、「(ドローンの)部品は風力タービンのブレードの複合材料レプリカの中に隠され、検査を逃れようとした」という。環境に配慮した、素晴らしい考えではないか。

ドローンは複数のコンテナに積み込まれ、2隻の船で輸送された。組み立て後のスペックは、長さ33フィート、重さ3トン、翼幅66フィートだ。これらはおそらく、12発のレーザー誘導兵器を搭載可能な中国製軍用ドローン(UAV)「翼龍II」だろう。「Defense News」の7月2日の報道によると、タービンブレードに偽装されたドローンはハリファ・ヒフター将軍の元へ届けられる途中で差し押さえられた。報道によると、ヒフター将軍はアフリカで活動するロシア軍に作戦物資を供給しているという。

中国共産党はまた、イランが製造した自爆ドローン「シャヘド136」に似た新しい攻撃ドローンを開発している。中国版は「Sunflower−200(向日葵200)」と呼ばれており、これはウクライナの国の花にちなんだ下品な言い回しだ。「向日葵200」は、中国とロシアの共同開発による産物である可能性が高い。

中国製の軍用ドローンは、軍事物資の援助を禁止する制裁命令を回避するため、すでにキットの形でロシアに送られているとの報道がある。これは、北京当局が最近、違法に軍民両用装備とサービスの提供を行っているという事実に合致する。ブルームバーグによると、中国は4月以降、ロシアに「軍事目的の衛星画像、戦車用のマイクロエレクトロニクスや工作機械、武器に使用される一連の技術」を提供している。

中国のドローンはアジアで特に懸念されている。台湾軍によると、中国の軍用ドローンが最近、台湾の辺境にある馬祖島の空港付近をホバリングしていたという。ディフェンス・ポスト紙は7月3日にこの事件を報じた。台湾は、中国の軍用ドローンや民用ドローンによるこのような「グレーゾーン」侵入に頻繁に直面している。台湾軍を絶え間なく挑発し、防御行動を起こさせないようにする「茹でガエル」戦略のようだ。鍋を急激に加熱して、カエルが飛び出してしまうようなことを北京側は望まないだろう。

台湾周辺地域ではドローンの使用がますます一般的になっている。4月には、中国の民間ドローンがエルダン島で台湾軍兵士に嫌がらせをしたと報じられている。台湾軍はまた、2022年に金門島上空で所属不明の中国民間ドローンを撃墜した。自衛のため、米国と台湾の特殊部隊の兵士は、中国本土に対して手持ち式の軍用監視ドローンを使用しているとも報じられている。

残念ながら、中国製ドローンはコストパフォーマンスに優れている。世界のドローンの民間供給の4分の3は、DJIの1社だけで賄われている。そのドローンは比較的先進的で安価であり、ウクライナの戦場で実証されているように、軍事用に改造することもできる。そのようなスペックは、中国(共産党)の侵略を抑止したい台湾にとって最適解となるだろう。しかし、中国製ドローンのような低価格の代替品はほとんどない。中国は製造拠点が大きく、規模の利益を活かして生産することができるため、同様のスペックを備えた製品を製造しようものなら、コストは中国の同等品の20倍にもなることを、米国と同盟国は心に留めておくべきだ。

だから、米国と同盟国はサプライチェーンを中国から移し、いわゆる「フレンドショアリング」を行わなければならないのだ。例えば、中国製ドローンを台湾防衛に使うことはできない。北京は遠隔制御可能なシステムの搭載を義務付けており、バックドアからハッキングされたら戦時に大損害を被るリスクがある。

そこで台湾軍は、5年間で1億7500万ドルを投じて中国以外の民間業者から3200機のドローンを購入することを提案した。これは、台湾が「レッドサプライチェーン」と呼ぶ中国のドローンへの依存をなくすのに役立つだろう。

しかし、世界を防衛するにはそれ以上の対策が必要だ。かつて中国製ドローンを購入していた米国防総省は、中国共産党の膨大なドローン軍団に対抗する新たな戦略を打ち出している。「レプリケーター」構想と呼ばれる10億ドル規模の計画を打ち出し、2年以内に陸、海、空、宇宙などの領域に「数千の自律型システム」を配備する。6月19日、米国務省は「スイッチブレード(米製自爆ドローン)」ドローン​のような​徘徊兵器を含む約1千機のドローンを含む3億6千万ドルのパッケージを承認した。

これらは、米国のリーパードローン(MQ-9 Reaper)とともに、台湾海峡を越えて侵攻する中国海軍を包囲し、打ち負かすのに不可欠な戦力となる可能性がある。リーパーは対艦ミサイルを搭載できる大型ドローンだ。従来の航空戦力と海軍力に加え、海上から侵攻する船舶を標的にし、スイッチブレードで上陸した部隊を掃討することができる。台湾はイスラエルからドローンを購入し、独自の軍用無人機と対ドローンシステムを開発している可能性もある。

世界中の民主主義国を中国政権の巨大な防衛産業から守るには、民主主義国による世界規模のサプライチェーンが必要だ。経験豊かな防衛産業がロシアの支配から逃れられるなら、ウクライナもその対象になる。勝利に胸を昂らせ、次の戦争に備えよう。強さによる平和こそが求められている。

時事評論家、出版社社長。イェール大学で政治学修士号(2001年)を取得し、ハーバード大学で行政学の博士号(2008年)を取得。現在はジャーナル「Journal of Political Risk」を出版するCorr Analytics Inc.で社長を務める傍ら、北米、ヨーロッパ、アジアで広範な調査活動も行う 。主な著書に『The Concentration of Power: Institutionalization, Hierarchy, and Hegemony』(2021年)や『Great Powers, Grand Strategies: the New Game in the South China Sea』(2018年)など。
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