中国共産党の「臓器狩り」生存者、米ワシントンで経験語る

2024/07/13 更新: 2024/08/02

中国黒竜江省出身の法輪功修煉者、程佩明氏は7月3日、米ワシントンで会見を開き、中国共産党によって本人の同意なく肝臓を摘出された経験を明らかにした。これを受けて、臓器収奪について複数の米議員があらためて非難を表明。法輪功への25年におよぶ残酷な弾圧をやめるよう、党に求めた。

程氏は中国を2015年に離れ、米国当局の協力を経て2020年に渡米。米国での医療診断で、肝臓と肺の一部が摘出されていることがわかった。

「私は千辛万苦のすえ、魔の巣窟から逃れ米国に来ることができた。私の願いは、この悲痛な経験を公にして、中国共産党による残酷な迫害と臓器摘出の犯罪を明らかにすることだ。米国に感謝申し上げる」

死からの生還

程氏は会見で、その半生を語った。1965年に黒竜江省鶏西市で生まれ、1998年から法輪功の修煉を始めた。中国共産党によって5回も連行され迫害を受け、2001年12月に8年の刑を言い渡された。

黒竜江大慶刑務所に収監されていた2004年11月16日、健康であるにもかかわらず、大慶第四病院に移された。「危篤」状態だから「手術で死亡する確率は8割」と程氏の家族は警察に告げられた。

「(警官は)手術の同意書にサインするよう求めたが、私は拒んだ。その時、6人の警察官が私を押さえつけ、麻酔を打った。19日に目覚めたとき、右足はベッドに鎖でつながれ、片腕には点滴が打たれ、両足にも静脈注射の管が刺さっていた。鼻に酸素チューブが入れられていた」

程氏は約一週間後の23日、大慶刑務所に戻された。当時は「毎日咳をして、左肋骨に痛みとしびれがあり、起き上がることができなかった」という。今でも左腕と肋骨に痛みが残っている。胸部左側には、35センチにわたる切開痕がある。

切除された肝臓について述べる程佩明さん(明慧ネット)

二度目の病院への連行

程氏は会見で、自分が2度目の臓器狩りにあいかねない状況だったことを明らかにした。

2006年2月14日、刑務所における拷問が続くことへの抗議として、程氏はハンガーストライキで抗議していた。

20日後の3月2日、体調不良ではないにもかかわらず、程氏は大慶の別の病院に移送された。「私は5階に閉じ込められ、足かせでベッドの枠につながれ、2人の警察官に監視されていた。そこに医師が来て、私の腹を触り『明日手術をする』と告げた」

その日、程氏の妹が来院。看守は手術の目的は「飲み込んだカミソリの刃」を取り出すことで、「死亡する確率は8割」と言われたという。

「嫌な予感がした」と程氏はふりかえる。

3日未明、程氏は監視の目をかいくぐり、非常階段を通って病院から脱出した。中国公安部はB級指名手配令を出し、5万元の懸賞金をかけた。

「のちに明慧網で法輪功修煉者の臓器が生きたまま摘出されているというニュースを見て、恐ろしくなった。病院での経験を思い返すと、身震いする。最初の病院で行われた『手術』が何を意味するのか、あとからわかった」

米国で検査 肝臓の切除があきらかに

程氏が中国で受けた手術について知るため、米医療機関ではMRIやCT、超音波検査など細かな検査を受けた。記者会見に同席した、米ハーバード医科大学で画像診断研究を行う法輪功修煉者チャールズ・リー(Charles Li)氏がその詳細を報告した。

「分析によると、程氏の肝臓左葉が切除されていることが確認された」

リー氏は、程氏のCTスキャンでは肝臓左側の2区域と3区域が欠損していると説明した。アジア人男性の左肝と右肝の比率はおよそ45対55だが、程氏は27対73だった。このほか、CTスキャンの3D再構成で手術切除の痕跡がみられた。

程氏の診断結果は肝移植医を含む10人の医師が分析しており、上記の所見を認めたという。

臓器狩り生存者は「奇跡」

米カトリック大学の名誉教授セン・ニー(Sen Nieh)氏は会見の場で、程氏が生存できたことは、まさに「奇跡」だと述べた。そして、喫煙や飲酒といった悪習慣のない39歳は、最適の“ドナー”だっただろうと見解を述べた。

「(最初の臓器移植)手術は服役から2年目に行われ、まだ6年の刑期が残っていた。病院から刑務所に戻れば『ドナー』となる可能性があったのだ」

医学研究分野で働いた経験のある在米独立評論家の横河(Han He)氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、「中国では、臓器のために人が殺される」と答えた。

強制臓器摘出それ自体が違法なため、基本的に(摘出された人物のなかに)生存者はいない。部分移植や不適合だったなどの特殊な状況で、程氏の臓器は全摘されることなく、生き残ることができた」

「被害者の証人はめったに現れないが、強制臓器摘出の事情を知る医師は多いはずだ。しかし、自ら犯罪行為を公にする勇気あるものは少ない」

国務省が調査指示

ロバート・デストロ米国務省人権担当次官補、2019年撮影(米国務省)

程氏が米国に来て自身の経験を公に語るうえでは、コロンビア大学法学部教授のロバート・デストロ(Robert Destro)元米国務省人権担当次官補が、決定的な役割を果たしている。

デストロ氏は、2015年に中国を離れた程氏の状況を知った後、国務省の民主主義・人権・労働局から東アジア太平洋局に対して、この事件の調査と状況把握を指示したことを明らかにした。

「提供された情報に基づき、事件はさらなる調査に値すると判断した。程氏を米国に招き検査とさらなる調査を受ける手続きをした」

デストロ氏は、臓器収奪は「恐ろしい形の人身取引だ」と指摘。世界的にみられる犯罪ではあるものの、中国では「(共産党)国家が奨励しているといった十分な情報証拠がある」と強調した。

米政治家、中共の臓器収奪と法輪功迫害を非難

過去25年間、中国共産党は法輪功修煉者に対して、全国規模の徹底的な弾圧を行ってきた。明慧ネットによれば、修煉者は公職追放、学業中断、違法拘禁、絶命にいたるほどの拷問などが行われてきた。

特に深刻なのは、臓器収奪だ。

2019年、英国ロンドンに本部を置く民間裁判機関である中国(臓器収奪)法廷(China Tribunal)は、「臓器収奪は、中国全域で、何年にもわたり、かなりの規模、行われてきており、法輪功学習者がおそらく主な臓器源である」との結論(裁定の要旨)を下した。

この結論については、米国務省が6月に発表した「2024年度 人身取引年次報告書」(英語原文)にも記載されている。

程氏の会見を受け、ボブ・メネンデス(Bob Menendez)上院議員は7月3日に声明を発表した。

「20年以上にわたり、中国は法輪功修煉者に対する残酷な弾圧が今日まで続いている。数万人の中国人は宗教的信念のために迫害され、投獄され、拷問を受け、強制労働をさせられている。さらには、臓器収奪に関する信頼性の高い告発もあがっている」

メネンデス議員は声明の中で、法輪功修煉者を含むすべての中国人の宗教的信念を尊重し、国際社会が立ち上がって「不当に拘束されているすべての法輪功修煉者を直ちに釈放し、尊厳と敬意を持って信仰の実践を許可すべきだ」と中国共産党に要求するよう呼びかけた。

米国務省のサム・ブラウンバック(Sam Brownback)元 宗教自由問題担当米国特別大使は声明で、程氏の勇気を称えた。「自発性を伴わない臓器収奪は、極めて野蛮であり、止めなければならない! 中国共産党の蛮行を罰せられるべきだ」

サム・ブラウンバック 元 宗教自由問題担当米国特別大使(@SamuelBrownback)

米議会、臓器収奪犯罪者に対する制裁法案 下院可決

近年、米議員は、臓器収奪を阻止するための強力な法的措置を講じることに力を入れている。

今年5月、上院議員マルコ・ルビオ(Marco Rubio)氏や下院議員クリス・スミス(Chris Smith)氏は、ブリンケン国務長官に書簡を送り、臓器収奪を阻止するために可能な限りの手段を尽くすよう求めた。

スミス氏は超党派の中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)の委員長であり、ルビオ氏はその委員会の委員を務める。書簡の中で、米国務省の懸賞金プログラムを利用して情報を求め、最終的に臓器摘出を目的とした人身売買という恐ろしい行為に関与した中国の個人に責任を負わせるよう呼びかけた。

6月25日、下院の超党派議員は全会一致で「法輪功保護法案」(Falun Gong Protection Act, H.R. 4132)を可決した。この法案は、中国国内で臓器収奪に参加し協力した個人に対して米国が制裁を課すことを要求している。制裁措置には、米国内の資産凍結、米国への入国禁止、ビザの取り消し、最高100万ドルの罰金および20年以下の禁固刑などが含まれる。

この法案は、上院で同様のバージョンが可決され、大統領の署名を得て法律となる。

ブリンケン米国務長官(米国務省)

人権、宗教の自由、人身取引…米政府の報告書、相次ぎ「臓器狩り」取り上げ

米国務省が6月28日に発表した「2023年度 国際宗教の自由報告書」(英語原文)は次のように述べている。

「法輪功関連の出版物『明慧』によると、この1年間で188人の法輪功修煉者が迫害により死亡した。また、この1年間に当局が755人の法輪功修煉者を投獄し、さらに3457人の修煉者が逮捕され、2749人の修煉者が嫌がらせを受け、政治的に敏感な活動をめぐって嫌がらせと逮捕が増加したと報告した」

この「宗教の自由報告」はさらに、昨年3月にニューヨーク市弁護士会(New York City Bar Association)が報告書(英語原文)を発表し、「中国が良心犯から強制的に臓器を摘出し続けていることを示す十分な証拠がある」と記している。

米国務省が今年4月に発表した「2023年度国別人権報告書」(英語原文)の中国の人権状況に関する部分でも「臓器収奪」に言及している。

報告書は次のように述べている。「一部の活動家と組織は、政府が良心犯から強制的に臓器を摘出していると非難しており、これには法輪功修煉者や新疆で拘束されているイスラム教徒など、宗教的・精神的信者の臓器が含まれる」

程氏は記者会見で、交友のあった修煉者20人以上が迫害によって死亡したと述べ、彼らのためにも正義を訴え続けるとした。

「私が今日ここに立っているのは、自分のために声を上げるためではない…同じ時に迫害された人たちと約束をしている。『誰であれ、生きて外に出られた者は、必ず中で行われた罪深き迫害と真相を世界に伝える』と」
 

参考資料: 中国語VOA , 中国語版 明慧ネット

Falun info(法輪大法情報センター)から転載

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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