中国江蘇省南通市にあるレストランが「食中毒」発生防止のために、下痢止めの作用のある「ゲンタマイシン」という抗生剤(抗生物質)を混入した料理を客に提供していたことが発覚した。
発覚のきっかけは、レストラン従業員による内部告発である。
中国のレストランなどでの宴会で出される料理の多くは、「預制菜(よちさい)」と呼ばれる調理済み食品であり、そのあらかじめ加工・調理された「預制菜」には、添加物や保存料が多く含まれているため食中毒を引き起こしやすいことが報じられている。つまり、食中毒の発生を防止するために、「あらかじめお客に抗生剤を投入する」という、信じられない発想だ。
なお、「ゲンタマイシン」は処方薬の抗生物質で中国の「食品安全法」では、「生産・経営中の食品に薬剤を添加してはいけない」と定められている。
発覚
中国メディア「極目新聞」によると、告発を受けた市場監督部門が問題のレストランに対して抜き打ち検査行ったところ、厨房のゴミ箱の中から使用済みの「ゲンタマイシン」注射液4箱を発見した。
このほか、料理長のオフィスからは未使用の「ゲンタマイシン」注射液101箱を押収し、現場の料理からも「ゲンタマイシン」成分が検出された。
報道によると、同レストランの料理長や料理人は、昨年以来、集団食中毒事故の発生を防ぐため、料理(主に煮込み料理)の中に「ゲンタマイシン」を混入してきた。混入基準はひとテーブルごとに1本だという。これまで「ゲンタマイシン」入りの料理を累計1612皿販売しており、売上高は約8万元(約170万円)だ。
「ゲンタマイシン」は処方薬だが、当該レストランが使用する「ゲンタマイシン」は全て同じ薬局から仕入れているが、購入の際には処方箋を提出していないことも判明。
調査員が今年1月に、当該レストランに「ゲンタマイシン」を売った薬屋の売り上げデータを調べたところ、10箱以上の販売記録は110件以上あった。最も多く売り上げていた3店舗は、長期的に規則に違反して「ゲンタマイシン」を販売していたことも判明した。
この調査結果から導き出される結論として、「ゲンタマイシン入りの料理を提供するのは今回告発されたレストランだけではない可能性が極めて高い」ということだ。
南通市当局はその後、335の飲食企業や508の薬屋に対する「手入れ」を実施し、120の薬局に対しては是正を命じたという。
事件に関与した2人の料理人は「有毒、有害食品を製造・販売した罪」に問われ、それぞれに執行猶予付きの懲役2年、執行猶予付きの1年6か月の判決を言い渡され、計16万元の罰金も科された。
今回のような、「食の安全」をめぐる問題が発覚するたび、ネット上では、「信仰心を持たず、金稼ぎにしか目がない中国人のやることは怖すぎる」と嘆きの声が広がっている。
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