論評
中国国内の景気後退と、米国や欧州連合(EU)との貿易摩擦が激化する中、外国企業や投資家のみならず、中国企業までもが中国からの撤退を進めている。前四半期には、外国投資家が過去最高の約150億ドル(約2兆2146億円)を中国から引き上げ、純投資がマイナスに転じた。一方、米国への外国直接投資(FDI)は増加傾向にある。
中国人民銀行は、国内経済を刺激するために利下げを行っているが、投資家は米国債を購入することで約5%の利回りを得ることができ、中国経済のリスクを避ける傾向が強まっている。現在、中国経済が5%の成長目標を達成する可能性は低く、第2四半期のGDP成長率は4.7%にとどまった。
中国経済はコロナのロックダウン終了後も回復が遅れており、過去3年間で中国株式市場の時価総額は6兆ドル(約864兆円)以上の価値を失った。輸出は5月に縮小し、6月には部分的に回復したものの、成長は予想の2.7%を下回った。
中国の製造業者は工場の閉鎖や従業員の解雇に追い込まれている。消費の成長も鈍化しており、若年層の失業率は約14%に達している。
一方で、中国の対ロシア輸出は、特に自動車部門が増加しているものの、他の地域への輸出シェアは減少している。中国の輸出の多くは外資系企業によって牽引されているが、現在、その多くが撤退している。
外国および中国の自動車メーカーはかつて中国を大きな市場とみなしていたが、需要が落ち込むなか、中国の自動車メーカーですら海外でより良い市場を求めている。
これに加え、米国との貿易戦争やEUとの貿易摩擦の可能性で、これらの企業は中国以外の地域に目を向けざるを得ない。半導体への依存度が高い自動車部門も、米国の規制強化に伴い中国でのこうした部品の入手性に懸念を抱いている。トヨタ、三菱、ホンダ、日産、韓国現代自動車(ヒュンダイ)はいずれも中国での事業を縮小している。
中国企業も海外への投資を増加させており、第2四半期、中国企業の対外投資は過去最高の710億ドルに達した。この海外投資の増加は、国内の雇用の海外流出を意味しており、これまで中国が享受していたグローバルなアウトソーシングの恩恵を他国が受けることになる。その結果、中国の雇用の伸びが鈍化するだろう。
中国の輸出見通しは悪化すると見込まれている。現在、中国製EVはEUで 最大37%の関税に直面している。中国は世界貿易機関(WTO)に提訴したが、EUは中国(共産党)がEVメーカーに不当な補助金を出しているため関税は正当であると主張した。
米中貿易戦争はトランプ政権下の2016年から続いており、バイデン政権も関税を継続・強化した。また、民主党大統領候補のカマラ・ハリス副大統領もバイデン大統領の貿易政策を継承する可能性がある。トランプ氏は、ほとんどの製品に60~100%、中国製EV輸入には100~200%の関税を課すと述べている。UBSは、60%の関税は中国の成長を半減させると判定した。両国の経済規模の差と米国の成長率を考えると、中国の成長を半減させることで、中国が米国を追い抜くことは決してできないだろう。
中国国内経済の課題は依然として解決されておらず、不動産債務バブルが経済を脅かしていることはよく知られているが、あまり注目されていないもう一つの時限爆弾は、破綻の瀬戸際にいる地方政府である。
中共の地方政府の債務は11兆ドル(約1620兆円)に上ると推定され、そのうち8千億ドル(約118兆円)が債務不履行の危機に瀕している。この負債の多くは、未完成、未売却、未実現のインフラプロジェクト、交通機関、住宅開発によるものだ。これにより、地方政府は資金繰りに窮し、民間企業に対して多額の未払い税を要求する事態に陥っている。
中国共産党は、毎回の中央委員会全体会議、5年計画で経済改革の必要性を認識していると主張しつつも、実質的な改革は進んでいない。このため、最も楽観的な外国企業と投資家でさえも中国から資金を引き揚げており、中国企業も同様の動きを見せている。
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