中国共産党当局は、若者たちがハロウィンの機会に政府への不満を表せないよう、市民によるコスプレを禁じ、ハロウィン関連イベントを厳しく取り締まっている。
ところが、中国・上海の町で28日夜に撮影されたある写真が、華人圏で話題になっている。写真に映る若い男性は町の清掃員の服装(コスプレ)をし、その手に道路標識の看板を持っている。しかし、看板の大部分は男性の服で隠され、読み取れたのは「中路」(町のどこかの通りの名前)の文字だけだ。
その看板には本当は「我在淮海中路(私は淮海中路にいます)」、「很想你(あなたに会いたい)」と書かれていたが、彼は町を歩く際にはわざと服で一部文字を隠して「中路」の文字だけを見せていたのだ。
「烏魯木斉中路(ウルムチ通り)」
その「中路」の2文字にどんな意味があるのか。それは、この2文字を見れば、多くの中国人は2年前の「白紙運動(革命)」の時の「烏魯木斉中路(ウルムチ通り)」という上海市中心部の通りを連想してしまうからだ。
2022年11月、感染対策で逃げ道が封鎖され、避難できなかった住民10人が死亡した新疆ウイグル自治区・ウルムチで起きたマンション火災が引き金で「白紙運動」が全国を席巻した。
当時、上海の「ウルムチ通り」でウルムチ火災の犠牲者を弔う集会が開かれ、集会はいつしかは学生たちを中心にした市民の抗議活動に発展した。
当時、抗議集会の現場からは「共産党退陣」「習近平退陣」などのスローガンまで叫ばれていた。
(2022年の「ウルムチ通り」での抗議の様子)
突然巻き起こった抗議ブームに、上海当局は鎮圧を開始し、抗議活動の集結スポットである「ウルムチ通り」の道路標識を撤去したのだ。撤去する際に撮影された写真はネットに流出しており、写真のなかには、2人の町の清掃員が看板を持ち去っていたが、その際には服で看板の文字を隠していたのだ。
そのような経緯もあり、今回のコスプレの男性が演出していたのは、まさにその「ウルムチ通り」の道路標識が撤去される際のシーンを再現しているものと思われる。つまり、彼は「白紙革命」を暗に記念しているようなのだ。
人々は「白紙運動(革命)」でなぜ白い紙を掲げるのか? それは、厳しい言論統制が敷かれている中国における、「自由に発言できない故の、無言の抵抗」であることを示すためとされている。
そして今回、男性が抱えていた看板は「我在淮海中路(私は淮海中路にいます)」、「很想你(あなたに会いたい)」などと書かれていたため、直接的には「ウルムチ通り」と書かれていたわけではないため、「男性は警察に捕まっても、セーフだろう」と予想するユーザーも多い。
勇気ある男性はその後、町をパトロール中の公安に見つかり、職務質問された様子。彼がその後どのような処罰を受けたのかは不明だ。
ネット上では、この勇気あってそして知恵にも富む男性に対する賞賛コメントが多く寄せられている。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。