三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取は16日、東京都内で記者会見を開き、元女性行員による貸金庫からの巨額金品盗難事件について陳謝し、銀行の管理体制に重大な不備があったことを認めた。
事件発覚後初めての記者会見となった会見の冒頭で、半沢頭取は「信頼・信用という銀行のビジネスの根幹を揺るがす事案だと厳粛に受け止めており、お客様や関係者の皆様に心からおわび申し上げます」と述べ、事態の重大さを強調し陳謝した。
頭取は、「これまでの対応を通じ、被害内容が特定されたお客様への補償プロセスを開始したこと、お客様が安心して貸金庫をご利用いただくための対応策に目途が立ったことから、その概要等についてお客様や関係者の皆様にお知らせ致したく、本日ご説明の機会を頂戴しました」と続け、会見が開始された。
管理体制の問題点と対策
元行員による金品の窃取は本年10月31日に発覚した。行為者の元行員は練馬支店と玉川支店の40代女性。被害者は約60名、被害額は時価十数億円に上る。この被害内容は元行員の供述によるものだという。元行員は11月に懲戒解雇となった。
元行員は顧客の予備鍵を使用して貸金庫を不正に開けていた。予備鍵の管理は支店ごとに行われており、元行員は管理責任者だった。不正防止のためのチェックを子会社に任せるなど、顧客資産の管理体制にずさんな面があったという。今後、予備鍵を本部で一括管理するなどの再発防止策が実施される予定だという。
また、数十人の顧客から新たに被害に遭った可能性があるとの申し出があり、銀行側が確認を進めているという。
半沢頭取は「被害に遭われたお客様への補償と不安解消が最優先課題」とし、「信頼回復に向けて全力で取り組む」と決意を表明した。また、経営責任については「事実関係の調査を踏まえて判断する」と述べ、具体的な処分については言及を避けた。この記者会見により、三菱UFJ銀行の顧客資産管理体制の甘さが浮き彫りとなり、金融業界全体でのセキュリティ強化の必要性が改めて認識されることとなった。
本件をめぐり、金融庁は16日、三菱UFJ銀行に対し、法律(銀行法第 24 条第 1 項)に基づいて、原因や再発防止策に関する報告徴求命令を出したことがわかった。三菱UFJ銀行はウェブサイト上で「金融庁による報告徴求の受領について」報告した。加藤金融担当大臣は今月13日の閣議のあとの会見で「大変遺憾な事態だ」と述べた上で、金融庁として銀行による原因究明や再発防止策を確認していく考えを示した。
真の原因は何か?
半沢頭取も述べた通り、本件は「信頼・信用という銀行のビジネスの根幹を揺るがす事案」だ。一般的に銀行員への信頼は日本社会では高い。これは日本の先人たちが積み重ねてきた伝統の上に成り立った信頼だといえる。信頼回復に向けた動きは管理システムの改善にだけ留まるものではないだろう。今後の銀行の信頼を背負った「真因の追究」が期待される。
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