厚生労働省は、「高額療養費制度」の見直しを行い、来年8月から上限額を引き上げる。この制度は、高額な治療を受けた場合に患者の負担が重くならないよう、年齢や年収に応じて医療費の自己負担に月単位の上限額を設けているもの。
12月24日、福岡資麿厚労相は加藤勝信財務相と来年度の予算折衝を行い、上限額の引き上げを決めた。
新しい上限額
新しい上限額は、年収約370万円から約770万円の患者に対して、8万8200円程度(現行より8000円余り引き上げ)、年収約770万円から約1160万円の患者に対して、18万8400円程度(現行より2万円余り引き上げ)、年収1160万円以上の患者に対して、29万400円程度(現行より4万円近く引き上げ)にするとしている。
この見直しは段階的に実施される予定で、再来年8月からは年収の区分をさらに細かくし、上限額を2段階に分けて引き上げる方向。例えば、年収約650万円から約770万円の患者に対して、最終的に13万8600円程度、年収1650万円以上の患者に対して、最終的に44万4300円程度にするとしている。
全がん連からの要望書
厚生労働省は、医療費の増加が今回の見直しの背景にあるという。一方、「一般社団法人全国がん患者団体連合会(全がん連)」天野慎介理事長は、「高額療養費制度における負担上限額引き上げの検討に関する要望書」を2024年12月24日付で厚生労働大臣等に宛てて提出したことを同法人のウェブサイト上で報告した。
要望書では、『高額療養費制度における負担上限額引き上げは、がんをはじめとする命に関わる疾患で治療を受け、かつ高額な医療費を支払う全ての患者とその家族に影響を与えるものです。新たな治療や治療薬の登場によるがん治療の高度化に伴い、高額療養費制度の負担上限額まで支払っている患者とその家族が既に多くおり、特に「長期にわたって継続して治療を受けている患者とその家族」にとっては、大きな影響を与えるものとなります』と訴え、要望として『負担上限額引き上げの軽減および影響を緩和する方策について検討すること』という文書を提出した。
受療行動の変化にも注目
高額療養費の自己負担引き上げで、患者の受療行動がどう変化するのか? 今後注目が集まるだろう。高額な医療を受ける際の自己負担が増加することで、一部の人々は経済的理由から必要な医療を控える可能性も考えられる。また、医療費負担を避けるため、人々がより健康的な生活習慣を採用し、予防に注目する可能性がある。
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