4月28日夜、天津市の大型総合病院「天津医院」で、患者による医療関係者への無差別襲撃事件が発生し、医師2人が死亡、4人が負傷した(うち1人重体)と伝えられている。
容疑者は整形外科の手術を受けた患者で、事件の日、刃物を所持したまま検査をすり抜けて院内に侵入し、整形外科で勤務中の医師や看護師らに無差別に襲いかかった。
目撃者によると、その場で取り押さえられた容疑者の中年男は「奴のせいで俺の足は治るどころかもっと悪くなった!」と叫んでいたという。
エポックタイムズの情報筋によると、容疑者は整形外科の副主任 駱巍(らく ぎ)医師による手術を受けたが、期待した医療効果が得られなかったうえ、費用は予算を超えたため、容疑者は病院側が過剰に請求したと信じ、主治医を含む医師数人をナイフで刺したという。
容疑者の主治医の駱巍医師は襲撃後、死亡したと伝えられている。
事件直後から、中国当局は徹底した情報統制を敷き、現場写真や事件関連話題、追悼コメントまでもが検閲の対象となったため、現地の医療関係者や市民から強い反発が広がっている。
いっぽうで、医療界や市民から「医療従事者の命を守れ」との声が相次ぎ、SNSでは隠語を使用した情報の拡散が続けられている。
検閲の背景には、今年秋に天津市で予定されている新興・途上国の多国間枠組み「上海協力機構(SCO)」の首脳会議(サミット)の開催を控え、国際イメージを守る思惑があると指摘されている。
「手術室の中はお金があふれている」──医療腐敗の実態
2022年、中国広東省東莞市にある病院(東莞康華医院)で行われた新年会会場に掲げられた目を疑う内容の横断幕が話題になった。
そこには、「手術室のなかはお金があふれている(中国語:手術室裡全是錢)」と書かれていたのだ。
会場の写真がSNSで拡散されて「医療の本質は金儲けではない」「今の病院は救命より利益優先」などと非難の嵐となったが、病院側は看護師が雰囲気を演出する目的で作成したと釈明し、謝罪した。
それでも病院の説明に納得できず、「手術室のなかはお金があふれている」こそ今どきの病院の本音と信じる市民も多い。

不正や収賄が蔓延、利益を追求する経営方針、医療従事者の倫理観の乖離が深刻と昔から指摘されてきた中国の医療業界。
公立病院であっても政府からの財政支援は乏しく、多くの病院が自力での収益確保を迫られる現状があるため、こうした構造的問題は医療倫理の低下を招き、病院が本来の「治療機関」ではなく、「営利機関」へと変質してしまった。
その結果、治療内容も患者の病状に合わせるのではなく、利益率を優先して決定されるケースも少なくない。例えば、本来であれば部分麻酔で十分な手術には全身麻酔を施し、検査を過剰に重ねることで診療費を水増しするといった手法が日常的に行われている。
そうしたなか、「よっぽどのことがない限り、病院に行くな」「風邪くらいなら家でおとなしく寝ておけ、病院に行ったら過剰医療され、もっとひどい状態になるのがオチ」といった現職医師による内部告発やSNSを通じた警告も後を絶たない。
結果、患者側の不満と不信が高まり、医療機関での暴力事件やトラブルが頻発している。病院職員が患者やその家族から暴行を受けるケースも後を絶たず、医療現場は「高リスク職場」と化している。

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