中共国防相・董軍に解任情報 軍粛清と汚職疑惑で内部告発相次ぐ

2025/12/26 更新: 2025/12/26

中国共産党(中共)軍内の大規模粛清が続くなか、国防相・董軍(とう ぐん)の解任情報と汚職疑惑に関する内部告発が過去2週間で相次いでいる。軍紀委による取り調べ開始や軍籍剥奪との報道、さらに苗華人脈に連なる海軍高官の連鎖失脚が重なり、習近平政権下の中国軍中枢の不安定さが一層鮮明になりつつある。

時事評論家の蔡慎坤氏は12月25日、暴露情報を発信し、「董軍はすでに国防部長を解任されたが、大将としての待遇は引き続き維持されている」と述べた。今後、彼がさらに調査を受けるかどうかは不明であり、最終的には大将の肩書きすら剥奪される可能性もあるという。

蔡慎坤氏によれば、現在の軍高官に対する処理方針として、政治的に重大な問題がない場合は、だいたい「一部の資金を返納させ、階級を引き下げる」にとどまることが多いという。たとえば、大将は師団クラスへ、少将は連隊または小隊レベルに降格される。このような「非公開処理」は非常に多く、公式発表がなされないケースも少なくないと述べている。

政治局会議と軍紀委の動き 「軍籍剥奪・立件調査」の報道

同じ25日、ネットメディア「山河東夫」は番組内で、「12月25日に中共は政治局会議を開いた。公表文には『その他の事項についても研究した』と記しており、その中に董軍国防部長の解任議題が含まれていた」と暴露した。

また、セルフチャンネル「猴哥雑談」は12月22日、「中共中央軍事委員会が董軍の軍籍を剥奪し、海軍大将の軍階を取り消した上で、軍紀委が董軍の違反行為に関して正式に立件調査を行う」と報じた。

著名な政治学者・劉軍寧氏は12月18日、X(旧Twitter)上で「中共の国防部長は2026年1月初めに交代する」と投稿した。さらに劉氏は12月11日にも「現職の空軍司令・常丁求大将は軍紀委・監察委による『拘束面談中』に急性心筋梗塞で死亡した」と発信していた。

中共上層の動向を継続的に暴露している評論家の蒋罔正氏も12月12日に、「中央規律検査委員会が董軍と劉振立の正式な取り調べを開始した。この二人の主な問題は香港にある巨額資産である」と述べ、「彼らが中央経済工作会議に出席したからといって安全とは限らない」と語った。

董軍が公の場に最後に姿を現したのは12月22日で、中共軍事委員会による上将昇格儀式の場であった。国営メディアの報道映像では、張又侠、張升民、劉振立、董軍の4人の上将のみが出席している様子が確認され、董軍だけが壇上ではなく客席に座っていた。

董軍は1961年生まれ、山東省煙台市出身であり、中共党首・習近平の夫人である彭麗媛と同郷である。彼は長年にわたり中共海軍機関に勤務し、習近平の側近・苗華が海軍政治委員、軍委委員、政治工作部主任を務めていた時期に急速に昇進した。海軍中将から上将へと昇格し、海軍副参謀長、南部戦区副司令、海軍副司令、海軍司令、国防部長と次々に要職を歴任してきた。

苗華人脈と海軍高官の連鎖失脚

董軍は2023年12月、失脚した李尚福の後任として国防部長に就任した。しかし通常であれば兼任する軍事委員や国務委員への昇格は見送られた。軍事委員・苗華の失脚後には、董軍自身も取り調べの対象との噂が何度も浮上していた。

英紙『フィナンシャル・タイムズ』は2024年11月26日、複数の米政府関係者(現職および元職)からの情報として、「中共軍上層部で再び汚職スキャンダルが発覚し、董軍に対して取り調べが進められている」と報じた。これに対し、中共外交部と国防部はいずれも「デマ」と否定したが、その後も董軍の公の露出は続いた。

2025年1月、中共軍事委員で軍委合同参謀部参謀長の劉振立がマレーシアとインドネシアを訪問した。この動きを一部の観察者は「国防部長・董軍に渡航制限がかけられている兆候」とみている。

2025年3月14日、中共の全国両会終了後、国務院総理の李強は国務院全体会議を開催したが、国防部長・董軍は異例の欠席であった。さらに同月26日、国防部が山東省青島市で「2025年第一回上海協力機構・国際軍事協力部門会議」を主催した際にも董軍は姿を見せず、外部ではさまざまな憶測が広がった。

習近平軍改革と汚職粛清 董軍失脚が示す中共軍中枢の不安定化

中共前海軍中佐・姚誠氏は2024年11月28日の自身のチャンネルで、「軍内部の情報網を通じて、苗華に関する問題を調査するため、中央規律委員会と軍規律委員会が合同調査チームを編成して捜査に当たっている」と明かした。調査の焦点は苗華と関係の深い海軍・東部戦区出身者であり、前海軍政治委員の秦生祥、袁華智、そして国防部長の董軍がいずれも苗華に不利な供述をしているという。この3人はいまだ海軍幹部宿舎に居住しており、現時点では拘束されていないと述べた。

しかし10月17日、袁華智は何衛東、苗華ら9人の上将とともに失脚が公式発表された。さらに7月29日、海外メディアは秦生祥が逮捕されたと報じ、7月31日の中共「八一」建軍節レセプションにも秦生祥の姿はなかった。これにより、その情報が裏付けられた形となった。

董軍は2021年8月から2023年12月まで海軍司令を務め、その間、政委として秦生祥と袁華智の2人とともに勤務していた。そしてこうした中で、相次ぐ内部告発が董軍の解任・調査を伝える現状は、彼の危機がいまだ解消されず、むしろ深刻化していることを示している。

東方皓
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