アメリカの2人の上院議員は6月1日、ロシアのプーチン大統領が和平交渉を意図的に遅らせ、その間に新たな軍事攻勢の準備を進めていると警告した。両氏はウクライナを訪問後、ロシア産エネルギーを購入している中国共産党(中共)およびインドを対象とした「二次制裁法案」の審議に上院が着手する方針も明らかにした。
米政治メディア「ポリティコ」によれば、共和党のリンゼー・グラム議員と民主党のリチャード・ブルーメンソール議員は、ウクライナでゼレンスキー大統領と会談し、ロシアの戦争遂行能力を削ぐためには厳格な制裁措置が必要だと訴えた。
ウクライナの国営通信社、ウクルインフォルムによると、5月30日の現地訪問の際、両議員は停戦交渉が進展していない現状を踏まえ、米上院が「来週にも行動を開始する可能性がある」と述べ、対ロ制裁法案の審議に入る見通しを示した。
この新たな法案では、ロシアの石油・ガスおよび石油化学製品を購入する国に対し、最大500%の関税を課すことが提案されている。制裁はロシアのエネルギー貿易の約70%を断ち切ることを目的とし、同国の戦費調達能力を大幅に削ぐ狙いがある。
グラム氏は「上院史上、最も厳しい制裁法案だ」と述べ、ブルーメンソール氏は「ロシア経済を国際貿易から孤立させる“壊滅的な法案”」と表現した。
またグラム氏は、パリでフランスのマクロン大統領と会談した際、ヨーロッパの同盟国もこの制裁措置の意義を理解し、アメリカによる経済制裁に支持を示していると明かした。
「彼らは『やるべきだ、この法案を通せ』と言ってくれた。ロシア産エネルギーをまだ一部輸入しているとはいえ、その割合は全体の10~14%に過ぎない」と語った。
両議員は、今後2週間がウクライナ戦争の行方を大きく左右する重要な時期になると強調している。
キーウでは、戦争で被害を受けた地域を視察。グラム氏は、約2万人のウクライナの子供たちがロシアに強制連行されていると指摘し、「彼らを取り戻すことは正義の問題だ」と語った。ブルーメンソール氏は、首都キーウ近郊の都市ブチャで発見されたロシア軍による集団墓地について「極めて悲惨な光景だった」と述べ、プーチン大統領を「暴君であり殺人者」と非難した。
両氏は米AP通信に対し、プーチン氏が夏から初秋にかけて新たな軍事攻勢を仕掛ける準備を進めていると述べた。
グラム氏は「彼(プーチン氏)には戦争を終わらせる意志がまったくない」と指摘。ブルーメンソール氏も「プーチン氏はトランプ大統領を利用して時間を稼ぎ、その間により多くのウクライナ領土を奪おうとしている」と批判した。
さらに両氏は、「今すぐ行動を取らなければ、将来的にNATOの集団防衛義務が発動され、アメリカが武力衝突に巻き込まれる事態になりかねない」と警鐘を鳴らしている。
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