「習近平への公開書簡(致習近平的公開信)」と題した、習近平政権を批判する長文が、海外サイトの投稿企画で入賞した。
この文章は、2025年に海外の中国語系メディア 中国行動 が実施した募集企画「致各界人士系列公開信(各界の人々に向けた公開書簡シリーズ)」で、三等賞を受賞した。
作者は「沫文」と名乗り、文章では特定の事件ではなく、習政権下で中国社会がどう変わったかをまとめて批判している。
文の中心は、権力が一人に集中し、誰も意見を言えなくなったという指摘だ。
評価や処分はその時々の判断で決まり、役人は沈黙し、社会には従う人だけが残ったという。
その結果、自由や権利は次々と制限され、監視と密告が当たり前になった。
作者は「話せば罰せられ、黙っていても安心できない社会になった」と訴えている。
文章は、基本的な権利の縮小も具体的に挙げる。
弁護士や記者、市民活動家、宗教関係者が締め付けの対象となり、少数民族への強い抑圧も進んだとしている。
経済については、不動産不況、雇用不安、地方財政の悪化を列挙。
「働いても生活が良くなる実感が持てない」と感じる人が増えた現実を描いている。
感染症対策では、三年間の厳しい管理が生活と経済を壊し、最後は十分な説明もないまま方針が急に変えられ、多くの混乱と被害が残ったと批判している。
外交面では、強硬な姿勢が国を強くしたのではなく、対立と不信を広げたと指摘。香港への統制強化や台湾への圧力、海外への影響工作も並べている。
この文章は、新しい事実を暴くものではない。中国社会で起きている変化を、短い項目で積み上げた説明文だ。だからこそ、多くの読者は、作者個人の意見としてではなく、今の中国はどんな状態なのかを知るための文章として読んでいる。海外の投稿企画で評価されたのも、その分かりやすさにあった。
以下はその抄訳
作者:沫文
習氏へ
1990年9月、福州市党委接待所で別れてから、ちょうど35年になる。
いまやあなたは万乗の帝尊、私は一介の平民である。咫尺(しせき)天涯」または「咫尺の間(かん)にありながら天涯の如し(距離は近い(北京にいる)が、立場が違いすぎて遠い)氷と火の九重、もはや何の関わりもない存在だ。だが、だからこそ私は胸中を率直に語ることができ、虚飾も忌避もなく、言うべきことをそのまま言える。あなたもまた、耳に逆らう言葉を聞き、世の在りようと人心を知ることができよう。前置きはこのくらいにして、以下、率直に述べる。
あなたは狼のごとき野心を抱き、禍を内に包み込み、十年にわたりあらゆる手段を尽くし、天下の大不義を冒して倒行逆施し、寡頭政治を再び一人の独断専行へと引き戻した。かつて中共が天に誓って廃すると宣言した個人崇拝と終身制を、完全に復活させたのである。
歴代の僭主でさえ禅譲に際しては形ばかりの辞退を繰り返し、天下の非難を避けようとした。袁世凱も推戴された際には、「民意の帰するところ」「義として拒めない」と国民に何度も説明し、簒奪の名を恐れた。古今東西、あなたほど厚顔無恥でありながら内心では怯え、国民を人質に取り、天下を脅迫する者はいなかった。
それ以降、あなたは唯我独尊となり、憲政を破壊し、万機を専断した。「爵賞は心により、刑戮は口にあり」「愛する者には五族を栄えさせ、憎む者には三族を滅ぼす」棟梁を打ち砕き、賢良を害し、睚眦(些細な恨み)に触れれば必ず報いた。
いまや朝堂では「百僚は口を噤み、公卿は数合わせ」。目に映るのは小人、奸佞、諂媚者、弄臣、追従者ばかりであり、あなた自身は「饕餮のごとく横暴に振る舞い、凶暴をほしいままにし」「独夫の心、日々驕慢に固まっていく」
あなたは桀虜(けつりょ:暴君や蛮族)の態をなし、風俗を傷つけ民を虐げ、人民に残されていたわずかな自由と基本的権利をも段階的に剥奪した。
弁護士、記者、市民活動家、宗教団体と信徒など、独立した異議の思想をもつ者を一網打尽にし、ウイグル・チベット・モンゴルに対しては民族的抹殺と残酷な抑圧を行った。警察の暴力的執行を放任し、誰もがいつどこででも職務質問、拘束、殴打され、死に至る可能性がある。
インターネット、人工知能、生物技術を利用して、前例のない全方位的監視網を築き、人々からプライバシーと私的領域を完全に奪った。
「闘争」を煽動し「国家安全」「反スパイ」を濫用して、相互不信、密告、陥れ合いの社会心理を作り出した。国中が「語れば顕刑、腹で思えば密殺」「手を挙げれば網に掛かり、足を動かせば罠に触れる」状態である。
人民は権利を守れず、冤罪を訴えられず、露店も出せず、物乞いすらできない。満清異族支配を模倣した北京市中心部の居住制限から、公共空間の徹底的な取り締まり、娯楽や消費様式への細かな規制に至るまで、枚挙に暇がない。
あなたは誇大妄想に陥り、「習近平思想」を党規約と憲法に書き込み、全人類の指導者として世界に方向を示そうとしている。「東昇西降」「すごいぞ我が国」と妄言を吐き、「人類運命共同体」「一帯一路」という夢想で既存の国際秩序を覆そうとした。
ロシア、北朝鮮、イランなどと暗黒の同盟を結び、世界を汚し、災厄をもたらした。ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス戦争という正義と邪悪、文明と野蛮の生死を賭けた対峙において、あなたは迷うことなく反人類の側に立った。
戦狼外交を放縦し、武力を誇示し、香港を破壊し、台湾武力統一を叫ぶ。米国など西側諸国に恩を仇で返し、周辺国や第三世界にも混乱と怨嗟をもたらした。
さらに、技術窃取、ハッカー攻撃、金銭工作、選挙介入、虚偽情報の拡散、メディアや学校への浸透、華人社会の操縦、海外異議人士への越境脅迫・拉致まで、卑劣な手段で魔手を世界に伸ばしている。
2018年、就任早々にあなたは「八項規定」を掲げ、倹約、簡素な移動、接待や封鎖をしないと宣言した。だが虚名を釣る言葉が冷めやらぬうちに、史上空前の奢侈と驕慢に溺れ始めた。
歴史上、多少なりとも理性のある皇帝は巡幸に際して民情を問う一方、地方を疲弊させぬよう自制した。だがあなたの「視察」「調査」は賛美を聞き、君臨の陶酔に浸るためのものとなり、禁空(空域封鎖)、封鎖、戒厳、武警、私服警官、狙撃手、厳重な警護が常態化した。
APEC雁栖湖国際会議センター、杭州国際博覧センター、故宮の豪奢な改修、金正恩への超高級接待、青島の50億元花火、長安での盛唐再現……人民の血汗を泥のように浪費した。
温家宝が訪日で宿泊費節約のため夜通し帰国したのとは対照的に、あなたは外遊のたびに数百人を伴い、ホテルを丸ごと借り切り、全物資を空輸し、宿泊先の門まで作り替えさせた。この浪費と放縦は、歴代暴君すら顔を覆うほどである。
2019年の中国ウイルスの発生と蔓延は、あなたの悪と専制の害を最も残酷に示した。隠蔽、虚偽、責任転嫁、人命軽視により、武漢は地獄と化し、世界は死屍累々となった。
重症者は治療を拒まれ、検査と方艙(隔離施設)は利権化し、最後は突然の全面放棄で百万単位の死を招いた。それでもあなたは悔恨も羞恥もなく、功績として表彰し、醜を美とし、喪事を喜事にすり替えた。
乱政の下で政治は腐敗し、外交・国防は混乱し、経済は崩壊し、失業と貧困が広がった。社会は羅刹国(地獄の国)と化し、君子は追われ、小人がはびこり、道徳と文化は崩壊した。人々は思考を止め、未来を失い、民族は退化しつつある。
いまや国人はあなたを未曾有の災厄、世界は人類の敵と見なしている。二十大(第20回党大会」)以降、あなたの権力と驕慢は頂点に達し、同時に盛極必衰の段階に入った。李克強の急死後の情報封鎖と弾圧は、あなた自身を歴史の断頭台へと近づけた。
いま取るべきは、即座に立ち止まり、己を責め、罪を認め、赦しを乞うことだ。それ以外の道を選べば、董卓やカダフィと同じ末路が待つであろう。後に及んで悔いても遅い。慎重に考えるがよい。
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