扇風機を見つめれば、涼しくなる。そんな“願い”が物理法則を超える…わけはないが、中国各地で奇妙な光景が広がっている。
最近、陝西省、広東、浙江、福建、江蘇省などの都市の商業施設が、屋外の巨大モニターに「回る扇風機の映像」を延々と流している。なかには「涼しいよ~♪」の音声付きのところも少なくない。
スクリーンいっぱいの巨大扇風機がいかにも「風が出そうな勢い」でブンブンと音を立てて回り続けている。実際に風は一切出てこないにも関わらず、画面の前にはなぜか人々が集まり、涼んでる。
「昔の人は梅を想像して渇きをごまかしていたけど、今の中国は扇風機の映像で涼しさをごまかす時代になったらしい」と、SNSでは、謎の涼の取り方の話題が瞬く間に拡散した。
「これ、政府の政策と一緒。見た目だけで中身は空っぽ」「中国社会の縮図そのものだよ。見栄えは派手、中身はスカスカ」といった政策と関連付けたリアルなコメントが目立つ。
いっぽうで、施設側の言い分は意外に真面目だった。「炎天下の屋外、せめて心理的な清涼感を提供したかったんです」
こうした運営側の善意に対し、「気持ちはありがたいけれど、でも現実の体感温度は1ミリも変わらない。熱中症対策には、全く、何の役にも立たない」「その電力、冷房に回してくれよ」といったネット民の突き刺さる声は止まらない。
今日も回る、街頭スクリーンの扇風機。だが、涼しさは永遠にスクリーンの向こう側だ。
(現代中国式「涼の取り方」)
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