厚生労働省は、合成麻薬「フェンタニル」の原料となる物質を取り扱う卸売業者や製造業者などに対し、不自然な量の発注や疑わしい取引を確認した場合、速やかに都道府県知事など行政機関に報告するよう求める通知を6月30日に全国の自治体に出した。通知では、原料の製造や輸出入を行う事業者が、取引の過程でその原料が法律で禁止されている麻薬の製造に使われる疑いがあると判断した場合、積極的に国や自治体に届け出ることが求められている。また、必要に応じて事業者に対する立ち入り検査も実施する方針である。
フェンタニルは、がん患者の痛みを和らげるためなどに医療用麻薬として使われているが、アメリカなどでは違法に製造・流通され、過剰摂取による死亡が深刻な社会問題となっている。日本国内でも不正流通を未然に防ぐため、厚労省は今回、監視体制の強化を図った。通知を受けて、愛知県など一部自治体では、7月1日からフェンタニル原料を扱う事業所への立ち入り検査を開始。名古屋市や豊橋市など26の事業所を対象に、取引実績の確認などが行われている。
麻薬及び向精神薬取締法の第五十条の三十三の2項の定めによれば、麻薬等原料営業者は、取り扱う原料が違法な麻薬や向精神薬の製造に使われる疑いがあると認めた場合、速やかにその内容を、輸入業者・輸出業者・製造業者は厚生労働大臣に、卸小売業者は都道府県知事に届け出なければならない。
大紀元の取材に対し、厚労省監視指導・麻薬対策課は「従来から法律に則り指導してきた通り、一般慣習上から逸脱した取引などが見られる場合は報告してもらうように指導している。今回の通知はそれを強調するものであり、今後も管理を徹底していきたい」と述べた。
今回の対応は、アメリカでのフェンタニル乱用による社会問題化や、中国からの違法輸出事例が報じられる中、日本国内での不正流通を未然に防ぐ狙いがある。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。