中共のデジタル体制 詐欺横行や極度の監視 亡命技術者が告発

2025/07/17 更新: 2025/07/17

中国共産党(中共)のデジタル体制は、データ捏造、学術腐敗、そして個人の行動を極端に監視する構造が築かれた。こうした闇を、自ら体験を通じて知ったソフトウェアテスト技術者・陳恩得氏が暴露した。

陳恩得氏は、かつて中共傘下の複数プロジェクトでソフトウェアテスト技術者として働き、国営企業や政府機関の公式案件に関わってきた。彼は最初、正式なオフィスも存在しないペーパーカンパニーに籍を置き、その後、アリババ傘下の菜鳥テクノロジー、さらに政府系の天闕テクノロジーに転じていった。約7〜8年間にわたり、中国国内でのデータ改ざん、学術腐敗、国家によるデジタル監視といった実態を自ら経験した。

2023年、陳氏はアメリカへの脱出に成功し、大紀元のインタビューにおいて、中国のソフトウェア業界に蔓延する詐欺や偽装、そして中共の情報支配体制の実態を詳細に明かした。

現在36歳の陳氏は、2015年に家族の紹介を受け、工場労働者から北京のソフトウェアテスト会社へと転職した。この会社は、実態のないペーパーカンパニーに過ぎず、電話やWeChatを通じてのみ業務連絡を行い、業務そのものは、陳氏が借りた簡素な部屋で処理した。正式な学歴や訓練を持たなかった陳氏に対し、会社側は偽造の卒業証明書を用意し、プロジェクトの条件を満たした。

ソフトウェア産業に蔓延する捏造と腐敗

陳氏の担当業務は名目上システムテストであったが、実際には渡されたユーザーマニュアルと仕様書をそのまま報告書に転記し、国家情報センターソフトウェア評価センターに提出して審査印を得る形式に過ぎなかった。

彼が最初に手がけたプロジェクトは、中国石化のシステム報告書であり、その後も国家信訪局、清華大学、北京農業大学、寧夏信訪局などの案件を処理した。中でも農業大学のプロジェクトでは、ソフトウェア側が「古いソフトを寄せ集めて名前を変えただけで、科研費を得るための見せかけ」と正直に打ち明けたことが強く印象に残ったのだ。

同様の事例として、清華大学のドローン操作システムがある。陳氏はドローンもシステムも見たことがなかったが、マニュアルだけをもとにテスト報告書を作成し、それが科研費の申請資料として認可された。

これらの案件の裏には、北京航空航天大学の陳莉教授が関与していた。彼女はプロジェクトの代表者であり、外部との調整も担当し、また、陳莉教授の元学生が設立した「中策軟評」が案件を受注し、陳氏の勤務先となった。実験室に合法性を付与するため、社長は国家審査員に賄賂を渡した。

陳氏は、こうした上下連携と金銭の授受によって構築された保護ネットワークが中国の官僚制度における常態だと指摘する。一度、緊急の報告書修正を命じられた際、彼は翌日2万元の現金を自ら国家情報センターに届けた。担当者は説明を要さずに金を受け取り、提出されたUSBから報告書を印刷・押印し、その場で封印処理を行った。通常3〜5日かかる審査工程を、現金と人脈を用いて1日で完了させる手口であった。

中共の「デジタル独裁」体制とは何か

こうした環境のなかで報告書作成が常態化し、陳氏は自身の将来に対する不安を抱き始めた。濡れ衣を着せられる懸念から会社を辞め、半年間のソフトウェア開発訓練を経て、2018年にアリババ傘下の菜鳥ネットワークテクノロジーへ入社した。

ここでの業務は、ユーザーの物流情報を収集・整理し、国内の宅配企業へ販売するというものであった。アリババで購入履歴や商品名、受取人の氏名・住所・電話番号といった情報がすべて社内システムで閲覧可能であることに、陳氏は強い衝撃を受けた。

アリババ内部には中共の党支部が常駐し、データは常時政府に提供可能な状態にあり、中共当局が誰かを摘発したいと判断すれば、ワンクリックで必要な個人情報を入手し、誰もその命令を拒まない体制が存在したのである。

2019年末にアリババを離れた陳氏は、杭州で政府向けのデジタル行政サービスを提供する天闕テクノロジーに転職した。ここで彼は、浙江省における「網格化管理」システムを担当した。このシステムは、住民を居住状況、戸籍、流動人口別で分類し、陳情者や反体制者といった重点監視対象を選別してリスト化する構造を持っていた。

異常行動をリアルタイムで通知し、即座に対応可能なこの仕組みは、事実上のデジタル監視カメラと化し、アリババ系のワークアプリ「釘釘」とも連携し、基層職員の承認履歴や行動も政府が把握しやすいものだった。

陳氏は、中共が2016年以降にデジタル人民元の試行を開始し、2023年には国家ネットワーク身分認証(デジタルID)を導入したことに警鐘を鳴らした。すでに中国全土17省で運用され、WeChat、淘宝、小紅書、鉄道予約アプリ「12306」など67の主要アプリケーションと連携した。

彼は、「このデジタルIDが義務化されれば、政府がある人物を『ブラックリスト』に入れるだけで、物理的拘束を行わずとも、マウスのクリック一つでその人物の社会的機能を停止できる。仕事も買い物も交通機関も治療も不可能となり、一瞬で生活は崩壊する。見かけは生きていても、実質的にはこの情報社会の中で死んだも同然となる」と、強調した。

このような制度的迫害を「データ文化革命」と、彼は名付けた。

コロナ禍の最中、封鎖政策への批判的発言を行ったことが発端となり、彼は健康コードによる社会混乱を天闕テクノロジー幹部に指摘した。しかし、その発言は「暴君に対する反抗」と見なされ、プロジェクトから排除され、孤立状態が続き、最終的に2020年7月に解雇された。

現在、陳氏は米国に拠点を移し、かつては恐怖から中共を公に批判できなかったが、六四天安門事件や文化革命、生体臓器収奪の実態を知ったことで、沈黙を捨て、告発者として立ち上がる決意を固めた。

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