アマゾンは、上海に設置していた人工知能(AI)研究院を閉鎖することを発表した。これは同社にとって世界で、最後の海外AI研究機関の閉鎖であり、米中間のテクノロジー分離(デカップリング)がさらに進行して、アメリカ企業による中国事業の縮小が続いている現状を象徴している。
7月23日、同研究院の主任応用科学者である王敏捷氏は、SNS上で、チームが「米中の戦略的な調整」により解散したことを明らかにした。この動きは、米中間の科学技術分野での対立が激化する中、多くのアメリカ企業が中国における研究・開発体制を縮小している現状と重なる。
2018年秋、アマゾンのクラウド事業部門(AWS)の上海AI研究院は、上海ニューヨーク大学の教授である張峥(ちょう しょう)氏の主導で設立された。主な研究分野は、グラフニューラルネットワークや機械学習である。また、オープンソースのフレームワーク「DGL」などを開発し、この技術が同社に約10億ドルの収益をもたらしたと王氏は説明した。
AWS(Amazon Web Services)の中国におけるクラウド事業は、主に現地の多国籍企業や、AWS技術を用いてグローバル展開する中国ハイテク企業を顧客としていた。フィナンシャル・タイムズの報道では、AWS中国のピーク時の従業員数は1千人を上回っていたとされる。23日、アマゾンの広報担当者であるブラッド・グラッサー氏は、「会社の組織や成長の優先分野、将来的な戦略方針を継続的に見直した結果、AWSの一部チームで人員削減を判断し、この決定は非常に難しいものであった」とコメントした。
また「今後も必要な決定を通じて、投資とリソースの最適化をはかり、顧客への新たなイノベーション提供に努める」と述べた。
今回の上海研究院の閉鎖は、アマゾンが世界的に進めている人員削減の流れの中で行われた。先月、最高経営責任(CEO)のアンディ・ジャシー氏は、AIの急速な導入により組織内でのリストラが不可避になると社員に伝えていた。
フィナンシャル・タイムズは、アマゾンだけが中国で事業縮小を進めているわけではないとも指摘。例えばコンサルティング大手のマッキンゼーは、最近、中国事業部門で生成AI関連のコンサル案件への関与を禁止するなど、米政府による技術輸出規制や審査強化への対応が進んでいる。
アメリカは近年、半導体やクラウドサービスに関して対中輸出規制を強化しており、高度な機器への中国企業による取得を制限した。このため中国のAI研究者と海外チームとの協力環境はますます縮小し、デカップリングの流れは、コンサルティング企業や法律事務所、投資会社等の専門サービス分野にも広がっている。
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