自民総裁選へ 次期首相候補は高市氏と小泉氏が軸か

2025/09/08 更新: 2025/09/08

石破茂首相は9月7日、自民党が相次いで選挙に敗北した責任を取り、辞任を表明した。自民党は近く総裁選を行い、勝者が国会での首相指名選挙に臨む。ただし自公与党は衆参両院で過半数を失っており、新総裁が自動的に首相となる保証はない。野党が結束すれば首相を擁立できる可能性もあるが、現実的には低いとみられる。

石破氏の辞任は党執行部の刷新を意味する一方、与党の立場の弱さを浮き彫りにしている。少数派政府となる次期首相は、政策を実現するために野党の協力を取り付ける必要があり、予算や法案の成立に向けて調整を余儀なくされる。

石破氏は記者会見で、後任に求める優先課題として

①米国との関税問題への対応

②防災庁の設立

③賃上げの実現

を挙げ、「成果を上げてほしい」と期待を示した。

日本は対外的な経済圧力と国内の景気回復を同時に進める必要があり、新首相にとって最初の試練は、2025年度補正予算や2026年度の予算・税制改革法案を巡る野党との合意形成となる。協力が得られなければ政局は一層不安定化する可能性がある。

自民党内の有力候補

高市早苗氏(64)
最有力候補の一人で、就任すれば日本初の女性首相となる。経済安保担当相や総務相を歴任し、2024年総裁選では石破氏に僅差で敗れた。改憲を掲げ靖国神社参拝も行うなど保守色が強い。

経済では日銀の利上げに反対し、財政支出拡大を訴える。日経新聞の世論調査では次期首相にふさわしい人物で23%と首位。

小泉進次郎氏(44)
小泉純一郎元首相の子息で「次世代の旗手」とされる。昨年の総裁選では改革派として党刷新を訴え3位。現職の農相としてコメ市場改革を推進している。2019年の環境相時代には脱原発を訴えたが、気候政策は「クールでセクシー」との発言で物議も。最新調査では22%の支持で高市氏を追う。

林芳正氏(64)
現官房長官で石破氏の側近。三井物産勤務やハーバード大留学、米連邦議会で助手を務めた経歴を持つ。外交と経済に豊富な知見を備え、防衛相、外相、農相などの要職を歴任。閣僚辞任時の「救火役」も担ってきた。

2024年総裁選では4位。日銀の独立性を尊重する姿勢から、市場では安定感のある候補と見られている。林氏は出馬意向を固め、岸田前首相らに伝えたと報じられている。

小林鷹之氏(49) 

元経済安全保障担当相で若手保守派の代表格。最近は台湾との交流を重ね、中国(中共)に依存しないサプライチェーンの構築を主張。2024年の総裁選では5位だった。

加藤勝信氏(69) 

現職の財務相で、長く政府要職を歴任。コロナ禍では防疫を主導し、党内派閥の調整力にも定評がある。財務相として米財務長官ベッセント氏と会談し、通貨問題を主要貿易交渉から切り離すことに成功した。

河野太郎氏(62) 

元外相、防衛相、デジタル相。総裁選に何度も挑戦しているが敗れてきた。率直な発言とデジタル改革の推進で知られる。最近の物価上昇を踏まえ、先月も日銀に金融引き締めを求めた。

茂木敏充氏(69) 

前自民党幹事長で、外相や経済再生相など閣僚を歴任。69歳と候補の中で最年長。2024年総裁選では6位だった。

9月8日に正式に出馬表明。「これまでの経験をすべてこの国に捧げたい」と強調した。

野党の動き

野田佳彦氏(68)
立憲民主党代表で、2011〜12年に首相を務めた経験を持つ。自民と組んで消費税増税を推進したことで財政タカ派と見られたが、7月の参院選では食料品の一時減税を訴えた。大規模金融緩和の段階的縮小も主張している。

玉木雄一郎氏(56)
国民民主党代表。元財務官僚で2018年に党設立に関わった。同党は昨年の衆院選で勢力を急拡大し、中道右派の重要勢力に成長。

税控除拡大や消費税減税を掲げ国民の可処分所得向上を狙う。安全保障では防衛力強化や外国人による土地取得規制、原発推進を訴える。金融政策では実質賃金が回復するまで緩和維持を主張する慎重派。

今後の焦点

自民党総裁選に立候補するには国会議員20人以上の推薦が必要。誰が選ばれても、2025年度補正予算と2026年度の税制改革法案を少数与党としてどう成立させるかが最大の課題となり、野党との協力が不可欠となる。

 

陳霆
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