高市早苗氏 外国資本の土地買収規制へ「GATS離脱」も示唆 相互主義の原則で公正な対応を

2025/09/20 更新: 2025/09/20

「日本列島を、強く豊かに」

自民党総裁選への出馬を正式表明した高市早苗衆議院議員が19日、埼玉県越谷市で開かれた政治集会『国家の「信」を立て直す集い』に登壇し、強い危機感と具体的なビジョンを語った。

高市氏は日米安全保障条約の現実について、「日本が武力攻撃を受けた時、米軍が自衛隊の前に立って戦ってくれるわけではない」と断言。日米のガイドラインでは、日本の防衛はまず自衛隊が主体的に行い、米軍はそれを「支援・補完する」と定められている事実を指摘し、他国に依存するのではなく、自国で国土と国民を守り抜く気概の重要性を訴えた。

高市氏は、国防を担う自衛隊の存在が明記されていない現行憲法を「残念だ」と表現し、「命を懸けて国を守る自衛隊員の名誉と誇りを守るためにも、憲法にその存在をしっかりと位置づけるべきだ」と語った。

また現代の脅威であるサイバー攻撃について「憲法が制定された時代にインターネットはなかった」と述べ、旧来の「通信の秘密」の解釈に縛られることなく、国家を守るための「能動的サイバー防御」の必要性を力説。国家の防衛能力を時代の変化に対応させる必要性を強く訴えた。

 安易な移民政策への警鐘

経済成長に伴う人手不足の問題に話が及ぶと、高市氏は単純労働者の受け入れについて慎重な姿勢を示した。安易に外国人労働力に頼ることは、結果として日本人の賃金が上がらない状況を招くと指摘。まずはIT化や機械化投資による生産性向上を優先すべきだと主張した。

「それぞれの国の人は、それぞれの国で生活するのが幸せ。日本は日本で、ベトナムの人はベトナムで生活し、文化は違えども仲良くする。それが本当の異文化共生ではないか」

単なる労働力の問題としてではなく、国家のあり方、社会のあり方という大きな視点から、慎重な議論が必要であるという立場を鮮明にした。

2025年9月19日、埼玉県越谷市で講演する高市早苗氏(撮影:大紀元)

静かなる脅威「外国資本による土地買収」への長年の闘い

高市氏は、安全保障上重要な土地が外国資本に買収されている問題について、自身が長年にわたり取り組んできた課題であると明かした。平成23年(2011年)には既に、売買を規制するための議員立法の骨子をまとめていたという。

最大の障壁として、憲法98条2項(国際約束の遵守義務)と世界貿易機関(WTO)のGATS協定(General Agreement on Trade in Services:サービス貿易に関する一般協定)を挙げた。日本は土地取引を留保せずに協定に加盟したため、「国際約束違反になる」という外務省などの見解により、抜本的な規制ができなかった経緯を説明した。

GATSは、サービス貿易の自由化と、その取引に関する国際的なルール作りを目的とした多国間の国際協定。WTOの設立協定の一部として、1995年に発効した。

高市氏は、令和4年9月20日に全面施行された「重要土地等調査法」についても、あくまで土地の利用状況を「調査」するにとどまるものであり、不十分であるとの認識を示し、土地取引については、相互主義(レシプロシティ)の原則を適用すべきだと主張し、相手国が日本人による土地所有を規制しているなら、日本も同様の規制をその国の国民に対して課すという、国際社会のスタンダードに則った公正な対応を求めている。

高市氏は、「現在、私は総理大臣でも総裁でもないが」と前置きしつつ、上述のGATSの制約を乗り越えるため「多少荒っぽいやり方も検討しなければならない」と述べ、GATSから一時的に離脱する可能性にも言及した。ただし、GATSは日本の多くの産業に市場開放の恩恵をもたらしているため、安易な離脱は現実的ではないとの見解も同時に示した。

そのため、今後、一時的にGATS協定を離脱し、土地取引を協定の適用対象外(留保)とすることで、協定に再び戻ることが可能かどうかなど、多角的な情報収集を行い、GATS加盟国の意見も踏まえ、日本の国益を守りつつ、国際的なルールに則った「ベストな方法」を探る考えを明らかにした。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
▶大紀元EPOCH TIMES JAPAN編集長 ▶「日本の思想リーダーズ」「THE PARADOX 真実のへ扉」番組ナビゲーター 、「大紀元ライブ」番組ホスト。
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