中国の連休期間中、河北省滄州市(そうしゅう-し)の道路脇の電柱に「反共」スローガンの貼り紙が現れた。そこには「中共は邪教(中共是邪教)」と印字されており、その写真が通信アプリ「テレグラム」のグループ内で広く拡散された。
今年に入ってから、中国各地で同様の「反共産党」標語の出現が相次いでいる。
海外の情報サイトによると、10月6日、河北省滄州市の路上で撮影された写真には、白地に赤い文字で縦書き印刷された「中共是邪教(中共は邪教)」の貼り紙が確認できる。右側には小さな赤い文字で「マルクスはサタン教を崇拝していた。サタンとは悪魔だ(馬克思信撒旦邪教,撒旦是惡魔)」との一文が添えられており、貼り紙は電柱に貼られていた。この貼り紙の上には、一般的な広告も貼ってあり、普段から人の目に映る場所であることが分かる。
中国における対政権意識の変化
滄州市在住の人権活動家・金さん(仮名)は取材に対し、「以前は中共政権を正統な存在と信じていた人が多かったが、近年は汚職や土地の不正転売、民衆への弾圧などが続き、国民の意識は明確に変化している」と語る。
金さんによると、反共スローガンは裏通りや集合住宅の郵便受け、公衆トイレの壁面などにも頻繁に現れているという。「先週も隣の建物の玄関内で『共産党は退陣せよ』という標語を見かけた。今では珍しくもない。通報する人もいない」と話す。
テレグラム上では、匿名の「目撃者」を名乗る投稿も相次ぐ。公衆トイレの個室ドア裏やフェンスなどに「独裁打倒」「沈黙を拒否する」といった短いスローガンが見られ、文字の大きさや書体も様々だという。
横断幕・投影スローガンも出現
こうした動きは路上の貼り紙にとどまらない。
4月には四川省成都の歩道橋で「政治体制の改革なくして民族復興なし」「人民は自由な権力を持つ政党を必要としない」などと書かれた横断幕が掲げられた。
また、8月には重慶市の大学城エリアで「中共を打倒せよ」「奴隷化ではなく自由を」との大規模投影スローガンが約50分間映し出された。
9月の北京では軍事パレード前に、公衆トイレの壁に「中国に民主と法治を」「独裁者は退陣せよ」といったスプレー文字が相次ぎ、当局は利用者にQRコードによる「実名登録」を義務づけるなどの管理強化に乗り出した。
さらに遼寧省、河北省廊坊・石家荘などでも、「中共は中国人民を代表しない」「中共は邪教だ」といった貼り紙が次々と確認されている。
専門家「社会不満の表出」
中国の政治動向に詳しい研究者・容吉林氏(仮名)は、「経済減速や住民所得の減少が社会の不満を行動へと転化させている」と分析する。
その上で、「ネット上での批判は検閲で封じられるが、物理的な貼り紙や落書きは監視の死角を突けるため、匿名で抵抗の意志を示せる」と指摘。
容氏はさらに、「オンライン上の不満表明が、現実空間での行動へと段階的にエスカレートしている。次の展開に当局は非常に神経質になっている」と警鐘を鳴らした。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。