「おから工事(豆腐渣工程)」と呼ばれる中国の手抜き工事は、いまや世界にその悪名を轟かせ、もはや誰も驚かない。崩れるはずのない屋根が崩れた瞬間、人の口から反射的に出るのは「またおから工事か!」の一言。ここまでくると、もはや証拠も分析もいらない。それでも人は断言する。倒れた校舎、落ちてくる屋根、割れた橋、沈んだビル。安全基準、良心、そして希望までもが、とっくに崩れ落ちている。
10月初旬、江蘇省連雲港市のホテルが屋根ごと崩れ、結婚披露宴を開いていた4組の家族が瓦礫の下に埋まった。祝福の場は一転して、救助の現場と化した。現場となった「名家厨房酒店」は、地元で人気の宴会場だった。
(崩落した屋根の現場、2025年10月2日、江蘇省連雲港市東海県のホテル)
記憶に新しいのは、わずか2か月前の8月に起きた「壁にめり込んだテスラ事件」だ。「時速十数キロ程度」で走っていたテスラ車が、地下駐車場の壁をあっさり突き破り、車体の半分が壁にめり込んだ。場所は不明だが、映像内の案内板などから都市部のショッピングモール併設の駐車場と思われる。事故後、ネット上では「駐車場の壁は石膏ボード製か」「アメリカ車のほうが中国の壁より頑丈だったとは」と皮肉の嵐。誰もテスラの性能を責めず、疑ったのは壁や、この国の建築そのものだった。

中国各地で近年、こうした「見た目の繁栄」が崩れ始めている。SNSでは「2008年以降に建てられた建物が危ない」「次はどこが落ちる番か」と自嘲する書き込みも増えている。
地震もないのに屋根が落ち、時速十数キロの車が壁を突き破る国。それは自然災害ではなく、人災の連鎖である。安全よりも体裁を優先した「おから国家」の行く先には、まだ多くの崩壊が待っている。

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