中国J-35戦闘機が空母運用に課題 元F-35指揮官が指摘

2025/11/13 更新: 2025/11/13

中国最新のステルス戦闘機J-35(殲-35)が空母からの発艦に成功し話題に。しかし米国元F-35指揮官は、技術・運用両面で課題が山積していると指摘した。J-35の実戦配備はなぜ難しいのか、米中の軍事力の本質的な違いと共に徹底解説。

中国共産党は今年9月、新型ステルス戦闘機J-35が空母「福建」から初めて離陸したと発表し、国内外の注目を集めた。しかし、J-35が空母艦載機として実戦運用に耐え得るかについては、軍事関係者の間で懐疑的な見方が広がっている。

元F-35作戦飛行隊の指揮官で、海兵隊員として唯一F-22「ラプター」を操縦した経験を持つデイヴ・バーク氏は、「戦争の勝敗を決するのは戦闘機ではなく、それを操る人間である」と指摘する。

バーク氏は11月12日付の米フォックス・ニュースへの寄稿で、中共の空母艦載機部隊が克服が困難な技術的、後方支援的、文化的課題を抱えていると分析した。こうした問題があるため、J-35が過酷な海上環境で実戦的な戦力を構築するのは難しいとの見方を示している。以下はその要旨である。

技術的ハードルの高さ 机上の理論と現実の差

中共側は、J-35がカタパルト発艦、アレスティング・ギア着艦、海上での腐食や塩害への耐性といった空母運用の厳しい条件を満たすよう設計されていると主張している。書類上では極めて優れた設計に見える。

しかしバーク大佐は、F/A-18およびF-35での豊富な飛行経験を踏まえ、「机上の設計と実際の運用とはまったくの別物である」と指摘する。艦載機が設計段階から実戦能力を備えるまでには、長年にわたる試験、失敗、改良の積み重ねが不可欠であるという。

J-35が直面する三つの壁

技術的信頼性の問題

中共は長年、エンジンの信頼性、ステルス性能、部品供給の安定性などに課題を抱えてきた。これらの問題は、塩分、高温、絶え間ない揺れといった海上特有の環境下では一層深刻化する。

運用限界への挑戦

J-35が空母から離陸すること自体は可能かもしれない。しかし、継続的な艦載運用は機体と乗員の双方に極めて大きな負荷を与える。問題は単なる技術面にとどまらず、運用、整備、そして人的資質を含む多面的な挑戦である。

時間による試練

艦載機が初めて発着艦試験に成功してから、実戦運用可能な水準に到達するまでには長い年月を要する。航行中の空母で作戦行動を行うためには、膨大な時間と経験の蓄積が求められる。

米軍の真の優位性 模倣不可能なリーダーシップ文化

バーク大佐は、先進技術が戦闘能力を拡張するのは確かであるが、有効なリーダーシップが伴わなければその力は無に帰すと強調する。これこそが、米軍が有する本質的かつ再現不能な強みであると述べている。

リーダーは力を増幅させる存在

米軍の優位性は、機体や装備そのものではなく、それを運用するリーダーや兵士たちにある。艦艇で任務に数千人の要員の訓練、規律、精神的姿勢が、数値では測れない「力の増幅装置」となっている。

文化の差が勝敗を分ける

バーク氏によれば、中共は米海軍航空隊を支えるリーダーシップ文化を再現することはできないという。

その核心にあるのは、現場でシステムを操る人間の主体性、適応力、そして責任感であり、これこそが米軍を複雑な環境下でも敗北させない原動力になっている。

結論 人材こそ最大の投資対象

バーク大佐は、敵対国が進歩を続けていることを認めつつ「J-35は今後さらに高度化し、より知的で有能な機体になるだろう。しかし、技術がどれほど進歩しても、決定的な要素は常に『人』である」と強調する。

そして映画『トップガン』の名ぜりふを引用する。「重要なのは飛行機ではない。パイロットだ」

バーク氏は「米国の最も重要な投資は常に兵士の技能と能力にある」と述べ「戦争に勝利するのはステルス戦闘機ではなく、人間そのものである。彼らは地球上で最も苛酷な環境下で自らを律し、仲間と機体を導くことで勝利を手にする」と結んでいる。

李言
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