調査:中国AI企業 第三国経由でNVIDIAチップ入手 米規制を回避

2025/11/14 更新: 2025/11/14

米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)の調査により、ある中国の人工知能(AI)企業が、4段階の手順を踏み、第三国を経由してアメリカの厳しい規制対象となっているNVIDIAの最先端チップを手に入れたことが判明した。

11月13日付の報道によると、WSJは複数国にまたがる一連の取引を追跡し、約2300枚の規制対象AIチップがインドネシアのデータセンターに搬入された事実を突き止めた。取引の中心にあったのは、アメリカ政府の輸出規制リスト(貿易ブラックリスト)に掲載された中国企業の子会社である。

アメリカは国家安全保障上の懸念から、2022年以降、NVIDIA製の世界最高水準AIチップを中国へ輸出することを禁止している。しかし、中国の企業や団体は依然として、さまざまなルートを通じてNVIDIAのチップを直接または間接的に手に入れる状況にある。

WSJによれば、中国側は次の4段階の手順で、第三国を経由してアメリカの製品を入手していたという。

第1段階:中国企業のパートナーがNVIDIAチップを購入

シリコンバレーに本社を置くテクノロジー企業Aivresは、NVIDIAチップを大量に購入していた。同社はNVIDIAと密接な関係を有し、同社が今年開催した主要企業イベントの共同スポンサーを務めていた。

中国のテクノロジー大手・浪潮(Inspur)は、Aivresの親会社の3分の1の株式を保有している。アメリカ政府は2023年、浪潮が中国共産党の軍事用スーパーコンピューター開発に関与したとして、国家安全保障上の理由から同社を輸出規制リストに追加した。さらに2025年3月、浪潮の台湾子会社Inspur Taiwanおよび台湾浪潮研究開発センターも同リストに加えられた。

規制上、NVIDIAは浪潮および同リスト入りした一部子会社と取引を行うことが禁止されているが、その適用範囲はAivresのような浪潮のアメリカ子会社には及ばない。

第2段階:第三国でNVIDIAサーバーの買い手を探す

消息筋によれば、Aivresは2024年半ばごろから、インドネシアの通信事業者Indosat Ooredoo Hutchisonのクラウドコンピューティング事業部門と交渉を開始した。

その結果、IndosatはAivresから約1億ドル(約150億円)で32台のNVIDIA GB200サーバーラックを購入した。1ラックにはNVIDIAの最新型Blackwellチップが72枚搭載されており、総計で約2300枚に上った。

Indosatは、カタールの通信大手Ooredooと、香港の富豪李嘉誠氏の長和グループ(CK Hutchison)による合弁企業である。

第3段階:中国企業との橋渡しを行う

関係者によれば、IndosatはAivresの仲介を通じて中国の顧客を獲得し、NVIDIAサーバーを購入したという。その顧客は、上海に拠点を置くAIスタートアップ企業「無限光年(INF Tech)」である。

同社の創業者・漆遠氏は上海の復旦大学でAI研究所を率いている。消息筋によると、復旦大学の代表者も交渉に関与していたが、最終的に演算処理契約(運算契約)を締結したのは無限光年であった。

第4段階:第三国経由でAI開発とテストを実施

関係者の一人によれば、10月時点でこれらのNVIDIAサーバーはすでに納入され、設置作業が進められていた。稼働後には、無限光年が金融アプリケーションや新薬開発など、科学研究向けAIを訓練する目的で使用する予定だという。

輸出管理に詳しい弁護士は、中国企業がチップを中国共産党(中共)軍の情報活動や大量破壊兵器の開発に利用しない限り、現行のアメリカ輸出管理規定の範囲内で合法と見なされる可能性があると説明している。

しかし、アメリカの元・現職の国家安全保障当局者の中には、このような取引についてアメリカ政府が調査すべきだと指摘する声もある。理由は、中国企業が現時点では商業目的のみでプロジェクトを進めていたとしても、中国共産党の「軍民融合」戦略を通じ、最終的に軍事開発を支援する可能性があるためである。

AivresはWSJの取材要請に応じなかった。NVIDIAの広報担当者は、同社のコンプライアンスチームが製品出荷前にパートナー企業を審査・承認していると述べた。アメリカ商務省輸出管理部門の報道官はコメントを控えた。

Indosatとの取引について問われた無限光年は、「当社は軍事用途の研究には関与しておらず、アメリカの輸出管理規則を遵守している」と回答した。Indosatは声明で、「無限光年は物理的にチップにアクセスすることはできない」と強調した。

林燕