日本の政治評論家、作家の竹田恒泰(たけだつねやす)氏が11月20日にX(旧ツイッター)で、最近中国共産党の官製メディアが沖縄の日本への帰属を疑問視する内容の報道を出していることについて、懸念を示した。
台湾有事は集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に該当するとの高市早苗首相の国会答弁に対し、現在中共政権が大反発し、日本への攻勢を強めている。
こうした中、中国共産党(中共)の機関紙・環球時報が19日に沖縄県の日本への帰属を疑問視するいわゆる「琉球(沖縄)帰属未定論」を訴える社説を掲載した。日本への揺さぶりとみられる。
こうした中共の攻勢に対し、竹田氏が20日にX(旧ツイッター)で「ついに中共は一線を超えてきたな。本気で沖縄を守らないといけない」と投稿し、強い懸念と危機感を示した。
SNS上でも、竹田氏と同様の意見が相次いでいる。また、チベットやウイグルの中国への帰属を疑問視する声や、沖縄県知事のコメントを求める投稿もある。
共産党機関紙が喧伝する沖縄の「帰属未定論」
沖縄については、現在中共の機関紙や系列紙などが「琉球帰属未定論」を一斉に取り上げ、日本に対する政治的な揺さぶりや牽制を強化している。
中共政権および官製メディアなどはこれまでも、たびたび「琉球帰属未定論」を持ち上げてきた。
昨年6月初旬、中共の機関紙・人民日報は、習近平の中国国家博物館への訪問記録を一面で報じた。尖閣諸島について明記された明代の抄本『使琉球録』の説明を受けた際、習近平は福建省福州市の党書記を勤めた当時を懐古して「福州と琉球の交流が深いことを知っている」と語ったという。
習の発言以降、官製紙やテレビ局で、沖縄の「帰属未定論」を広げる傾向にある。深センのテレビ局が13日琉球特集を報じたり、中国共産党に近い台湾メディア「中時新聞」もまた言論人の寄稿で、「ポツダム宣言では日本の主権を四島(北海道、本州、四国、九州)と定めており沖縄は明記されていない(沖縄帰属不明論)」と主張した。
2013年にも、習近平政権発足後間もなくして人民日報は琉球王国が明清時代に中国の属国であったとし、沖縄問題は「未解決」であると断じた。
また昨年9月には、香港紙「星島日報」は中国遼寧省にある大連海事大学が沖縄関連の研究を目的とした「琉球研究センター」の設立を計画していると報道した。同紙によると、今月1日に大連海事大学で、設立準備のための研究討論会を開催した。北京大学や復旦大学などの専門家20人以上が招かれている。
沖縄と日米に対して「離間の計」
フランス国防相傘下のシンクタンク「軍事学校戦略研究所(IRSEM)」が2021年に発表した報告書は、中国共産党は沖縄と日米に対して「離間の計」を施すと記している。
引き離す狙いは何か。沖縄史に詳しい一般社団法人日本沖縄政策研究フォーラムの仲村覚理事長によれば、現行の中琉交流が目指す「平和」は米軍基地および自衛隊の排除だという。「19世紀以来、植民地支配を受ける日本から解放され、東シナ海を平和の海にして、島に一兵たりとも置かない。これが落とし所だろう」
中国共産党による影響工作は三戦(世論戦、認知戦、心理戦)と呼ばれる。防衛研究所の飯田将史氏は中国の認知領域における戦いに関するコメンタリーで、「敵の行動や決定を自身の望むように誘導したり、情報の改ざんによって混乱を招き、投降や同士討ちを引き起こし、最小コストの勝利を目指す」と中国国内の論文を引用して解説している。
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