日中関係が緊張するなかでも、中国から日本を訪れる観光客は後を絶たない。だが京都の街頭で行われたある取材では、彼らが抱える無言の恐れがあらわになった。
日本の記者が「習近平」という三文字を示した瞬間、中国人観光客たちが反射的に表情を変え、その場を離れる姿が相次いだのである。
街頭インタビューを受けていた上海出身の男性は、当初は明るく受け答えしていた。ところが記者がスマートフォンの翻訳画面で「習近平は日本への渡航を控えるよう呼びかけているがどう思うか」と示した途端、彼は小さく息をのみ、後ずさりしながら「わからない」「知らない、すみません」と繰り返し、逃げるように立ち去った。
別の上海出身の女性も、最初は日本旅行を楽しそうに語っていた。しかし記者が習近平の名前を指し示した瞬間、「これは言えない」と声を上げ、慌てて手を振りながらその場から去った。記者は「話す気はあったのに、習近平という言葉が出た途端に皆が黙ってしまう」と困惑を隠さなかった。
SNSではこの映像が数百万回以上再生され、数多くのコメントが寄せられた。「名前を聞いただけで逃げるのが現実を物語っている」「習近平の名前が禁句になっている」といった指摘が相次ぎ、中国国内で政治を口にすることがどれほどのリスクと恐怖を伴うのかを示す例として受け止められている。
一方、中国政府は台湾情勢を背景に「日本への渡航を控えるように」と自国民へ通知している。これに伴い、大手旅行会社は日本行きツアーの販売を停止し、複数の航空会社が日本路線をキャンセルしたことで、航空券の価格は急騰した。中国国内では「自分の意思でキャンセルしたのではなく、勤務先や航空会社に強制された」という声も多い。ある国営企業の社員は「出張も観光も日本行きは禁止になった」と語る。
政治と距離を置きたいと願う市民ほど、習近平という言葉を聞いた瞬間に話を切り上げる。海外の街角であっても、その恐怖は消えることはない。中国の現実が、京都の路上で静かに浮かび上がった形である。
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