【評論】4億5500万人の中国人が共産党組織から脱退 中国の将来左右する国際的潮流

2025/12/03 更新: 2025/12/04

米下院は11月、「社会主義の暴行をけん責する(Denouncing the Horrors of Socialism)」と題した決議案を可決し、社会主義の名の下に行われてきた多数の犯罪行為に対し強い懸念を示した。

決議案は、レーニンやスターリン、毛沢東、カストロ、ポル・ポト、金日成、金正恩、チャベス、マドゥロら社会主義思想の指導者を名指しし、彼らが人類史上最悪規模の災禍を引き起こし、1億人以上の非正常死をもたらしたと指摘している。

一方、北京では依然として「社会主義体制の優越性」を繰り返し強調する公式見解を発表している。

北京が優越性を喧伝する中、中国国外である数字が静かに、そして持続的に上昇している。

全世界脱党支援センターによれば、今年秋までに同センターを通じて中国共産党およびその関連組織(共産主義青年団・中国少年先鋒隊)からの脱退を表明した「三退」の人数は4億5500万を突破した。この「三退」は、2004年に発表された『九評共産党(共産党についての九つの論評)』を起点とし、21年にわたり続く異例の規模を持つ政治的潮流となっている。

『九評』は2004年11月に大紀元が発表した社説シリーズで、中国共産党(中共)の歴史的経緯、統治論理、そして「党文化」の構造などを多角的に分析し、中共政権の本質を「反天・反神・反人性」の“邪霊的意識形態”として指摘した。社説シリーズ発表から21年を経た現在、米議会が「社会主義は飢饉と大規模虐殺を繰り返し生んだ」と明記するに至り、ワシントンと脱党した中国人の間で「認識の整合」が進みつつあるように見える。

『九評』が巻き起こした「認知の転換」

中国では、少先隊・共青団・共産党への加入していることは多くの人にとって半ば「一般的に見られる経歴」だった。入隊・入団・入党のたびに掲げる「党に命を捧げる」などと誓うことを強要される。長らく、このことは政治的に正しいとされ、キャリアの出発点とさえみなされていたため、倫理性を疑問視する余裕はほとんどなかった。

『九評』発表後、大紀元が掲載した「厳粛なる声明」は、かつて党・団・隊に所属した全ての人に「速やかに脱退し、獣印を拭い去る」よう呼びかけた。

三退は、大きく見れば入党した際の宣誓を取り消す行為だといえる。かつて党旗や団旗の前で誓いを立てたのであれば、それを解除するためには、別の公開された意思表示が必要になるという考え方である。

そのため、脱党サービスセンターのボランティアたちは名簿の「規範性」をとりわけ重視している。英字の乱数や明らかに人名らしくない申請は統計に含めず、同一人物による複数回の提出も除外する。彼らは「一つひとつの名前は覚醒した中国人を表すのであって、好きに積み上げられる数字の羅列ではない」と強調している。

こうした「精神の政治」は中国の公式言説体系の中ではほとんど位置を与えられていないが、伝統文化の文脈では決して馴染みのないものではない。古くから「誓いの言葉が口から出れば、天地がその証人となる」「願う力こそが運命を形づくる」とされ、重大な選択において形而上的な領域が人生の行方に影響を及ぼすと中国人は長く信じてきた。

大紀元の「九評編集部」は、こうした文化的な語感を現代政治と結びつけ、独特の「脱党プロセス」を構築したのである。

4億5500万人を超える数字の裏側

全世界脱党支援センターによると、これまでに厳格な基準を満たし記録された三退の人数は約4億5500万人に達した。書式不備などで統計に含まれなかった申請は数百万〜数千万に上る可能性もある。三退の申請手段は、当初紙媒体・FAX・電話から、現在ではウェブサイト、暗号化通信ツール、SNSへと移行してきた。

中国本土と海外各地には、数百万人規模のボランティア・ネットワークが存在し、さまざまな形で三退を支援している。

記録された数字は、中国国内の政治・社会状況と密接な関連を示す。ボランティアによれば、2020年の新型コロナ流行、中共による死者数隠ぺい、そして極端なゼロコロナ政策は明確な三退の急増をもたらした。その後も、失業拡大、不動産危機、社会保険料の高騰、地方財政の破綻、さらに俳優・于朦朧氏の死亡をめぐる騒動などを申請者の動機としてしばしば記している。

「ゼロコロナで追い詰められ、この党が何なのかようやく分かった」
「于朦朧の死を知って、もう脱退しないと手遅れだと思った」

三退の動向をめぐり、近年、申請者の構成に変化が生じている。かつては『九評』や法輪功学習者たちによる勧めをきっかけとするケースが多かったが、ここ数年は自ら情報を探し、脱党サイトを見つけて手続きをする「自主的な覚醒」の比率が高まっているという。

高度なネット規制と検閲が続く中国で、こうした行動が増えていることは、世論圧力や生活体験の積み重ねによる「内側からの爆発」を示す兆候と受け止められている。

米政界の視線の変化 人権から「安全保障」へ

西側諸国は長らく、中共政権と向き合う際に宗教自由や人権問題を「道義的関心」として扱ってきた。しかし近年、一連の動きがその枠組みの変化を示している。

2025年11月、米下院は「社会主義の暴行をけん責する」決議案を可決した。決議文は「社会主義イデオロギーは権力集中を不可避とし、その集中はしばしば共産主義政権や全体主義、残酷な独裁へと転落する」と明記。中国の「大躍進」政策による飢饉にも言及し、推計1500万〜5500万人の餓死者を生んだと指摘した。

さらに、アメリカは「あらゆる形態の社会主義を非難する」と宣言し、国内での社会主義政策の導入にも反対姿勢を示した。

この決議自体に法的拘束力はないが、深刻な党派対立が続く議会で「共産主義がもたらした歴史的災厄」への認識が共有された点は象徴的だ。北京が依然として「制度的自信」を強調するのとは対照的である。

また、アメリカの「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」は「中共の宗教への戦争 宗教の自由への脅威、そしてなぜそれがアメリカにとって重要なのか」と題した公聴会を開催。サム・ブラウンバック前米国際宗教自由大使は証言の中で、中共による宗教弾圧(とりわけ法輪功への迫害)を「集団虐殺」と見なすべきだと訴え、この問題を米国の国家安全保障政策に組み込む必要性を訴えた。

ブラウンバック氏は、「中共が真に恐れているのは米軍の空母でも核兵器でもない。宗教の自由だ」と述べ、多くの中国人が独立した信仰・信念を取り戻せば、党によるイデオロギー支配が揺らぐ可能性を指摘した。

宗教迫害と「政治犯データベース」

「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会」が運営する「政治犯データベース」には、中国で言論、信仰、維権活動を理由に拘束された人々が長年記録されている。2023年時点で登録された2600超の拘禁されているケースのうち、約460件が法輪功学習者であり、既知の政治犯・良心犯の中で極めて高い比率を占める。

イギリス内務省が今年公表した国別報告でも、法輪功学習者に対する嫌がらせや恣意的拘束、長期刑の判決が依然として続いていると指摘し、拘束者への深刻な肉体的・精神的虐待、さらには大規模な臓器収奪疑惑にも言及している。北京側はこれらの指摘を一貫して否定している。

今回の公聴会では、ブラウンバック氏が国会の公式の場で初めて「三退運動」に直接言及し、法輪功学習者が数億規模の中国人を中共組織から脱退へと導いてきた取り組みを評価した。これは、中共が長年「敵対勢力」として非難してきた市民運動を、「反全体主義」という国際的潮流の一部として再定義し、国家安全保障や世界的価値観の競争という広い文脈の中に位置づけ直す動きといえる。

三退の重要な歴史的意義

一方、批判者の間には疑問もある。「中国国内のファイヤーウォール内で、海外のサイトに脱党声明を出したところで、どれほど実効性があるのか」。中共はこうした手続きを公式には認めず、党員記録は組織部の奥深くに保存され続けているためだ。

しかし、象徴的行動が持つ政治的影響力は過去の歴史が繰り返し証明してきた。三退を選択した多数の人々にとって、脱党サイトの「送信」ボタンを押す瞬間は、体制への恐怖と決別し、自らの立場を再定義する「内面的分岐点」でもある。

脱党声明には次のような声が寄せられている。

「職場では言えない。でもここでは、中共が邪悪だと認めることができる」

「将来中国がどうなるか分からないが、少なくとも歴史の前では、私はもうあの党の一部ではない」

こうした「精神的脱退」は、ただちに街頭行動に結びつくわけではない。だが将来、経済崩壊や政治危機、大規模スキャンダルといった臨界点に直面したとき、国民が体制を擁護するのか、傍観するのか、あるいは反対側に転じるのかを左右する可能性がある。

この意味において、三退は将来の政治再編に向けて社会の深層に種を埋める行為とも言え、象徴であると同時に、現実的な積み重ねを伴う動きでもある。

民も官も行き詰まる中国 

中共当局が示す「経済は約5%成長」「社会は全体的に安定」「国民の党と政府への満足度は高い」といった公式の見解とは裏腹に、SNSや内部文書から漏れ出る情報からは、まったく異なる実態が浮かび上がる。

地方官僚が匿名でつづった書簡によれば、選択的な反腐敗運動によって官界には強い恐怖が広がり、「今日は彼、明日は自分ではないか」との不安が充満しているという。ある幹部は「もう民生どころではなく、『政治的な間違いを避けること』と『間違った側に立たないこと』だけを考えている」と吐露した。

こうした空気の中で行政効率や公共サービスの低下は避けられず、現場の疲弊は深刻さを増している。

上層部もまた、経済減速、不動産債務の膨張、若者の高失業率、外資撤退、さらに対外関係の悪化が重なり、かつてない内外からの圧力に直面している。

中共の内部視点では三退など単なるネット上の数字に過ぎないのかもしれない。しかし、こうした構造的危機と重ね合わせると、政権の正統性が静かに失われつつある兆候と見る向きもある。

トランプと「反共」 非教条的なイデオロギー戦

興味深いのは、ワシントンが「共産主義の脅威を再び直視する」流れを加速させた中心人物が、必ずしもイデオロギーの細部にこだわらないとされるドナルド・トランプ氏だったことだ。

2017年の国連総会での初演説で、同氏はすでにベネズエラなど「社会主義国家」が豊かな国を貧困と崩壊へと導いたと名指しで批判。その後、ベネズエラ系コミュニティ向けの演説では「西半球で社会主義は終わりを迎えつつある」と述べ、長年「社会主義」を政治的正統性の一部としてきた欧米左派に強い衝撃を与えた。

今年には、ホワイトハウスが「反共産主義ウィーク」を宣言し、共産政権下で犠牲となった人々を追悼した。国内政治でも極左派の判事や官僚を「共産主義的急進左派」と呼び、司法や官僚制度を通じてアメリカの体制を破壊しようとしていると警告した。

冷戦終結後、反共の言説が「古臭い」「政治的に不適切」と扱われた時代を経て、再び強い反共姿勢が公共空間に戻ったことは、中共が浸透させてきた国際機関や学界、ビジネス界に対し、「もはや見て見ぬふりはしない」とのサインでもある。

世界的な反共産主義の新たな戦線

北京がどれほど「中国モデル」を装飾しようとも、米議会が決議で指摘した社会主義体制下における権力集中、一党独裁、異見や信仰への組織的弾圧といった異常現象は否定しがたい。こうした体制の危険性はもはや中国内政にとどまらず、「グローバル安全保障」の議題として扱われつつある。

その観点から見れば、『九評』が21年を経た今でも読み継がれ、引用されているのは偶然ではない。同書は当初から中共問題を「政権の盛衰」ではなく「文明の選択」として位置づけ、中国人の脱党を「魂と運命に関わる決断」と描いた。

今日、米下院が正式に社会主義とその背後の共産独裁を非難する決議を採択し、議会公聴会で前・宗教自由大使が三退を「中共が最も恐れる力の一つ」と評したことで、この一見周縁的だった運動は、国際政治と価値観の競争の座標軸に再び組み込まれようとしている。

中国の民衆にとって、三退フォームの「確認」ボタンを押すのは数秒の行為にすぎない。だが、疲弊しきった巨大な体制にとっては、その一つひとつの「静かな内的離脱」が、中共が喧伝する「正統性」をかすかに削る行為となる。

4億5500万以上の人々が三退した背景には、無数の具体的な人間の選択がある。将来、中国が制度転換の局面を迎えるとき、精神的にすでに中共と決別した人々こそが、その方向性を左右する重要な力となり得る。それこそが、『九評』が21年前に紙面で記し、いま歴史上で現実味を帯び始めている予言なのである。

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