中国の東北地方で、街からタクシーがほとんど姿を消すという日が続いている。駅前には長い列ができ「今日はどうしたんだ」「今日はタクシーがいない」と市民が戸惑うほどの異常な光景が広がった。
異変の背景には、運転手たちの「もう暮らしていけない」という切実な声がある。許可を持たない白タクが配車アプリに入り込み、料金を安くして客を奪い続けた結果、合法タクシーの収入は急速に落ち込んだ。「10時間走って赤字の日もある」という声まで出ている。
そしてついに、複数の都市で数千台規模のタクシーが一斉に走るのをやめた。生活が崩れつつある運転手たちの決断は、街の交通を止めるほどの規模になった。しかし、この大ストは単なる不満の爆発ではなく、東北の町が抱えてきた深い問題の表れでもある。
中国では地域によって配車アプリの管理が甘く、許可を持たない自家用車でも、身分証や車の画像を送れば登録できてしまう場合がある。本来は営業が禁止されている車がアプリに混ざり、乗客は合法タクシーとの違いを見分けられない。税金や手数料がかからない白タクは料金を低く設定できるため、客は次々とそちらに流れ、合法タクシーの収入は激減した。
最初に大規模ストが起きた遼寧省・阜新市(ふしん-し)では、約3千台が運行を停止した。かつて炭鉱の町として栄えたが、産業が衰え多くの住民がタクシー運転手に転職した地域である。市は大量のタクシー許可証を発行し続け、需要より車の数がはるかに多い状態が何年も続いてきた。そこへ白タクが流れ込み、運転手たちは完全に追い詰められた。
続いて吉林省の松原市(しょうげん-し)でも約2千台がストに入り、市内の道路には動かないタクシーの列ができた。景気が冷え込み、市民の移動が減る一方で白タクが増えていくため、合法タクシーは競争に勝てない。「5年前の半分しか稼げない」という声もある。
東北三省では今年すでに十数件のタクシー集団ストが発生している。運転手の多くは中高年で転職が難しく、車のローンが残っているため辞めることもできない。生活の行き場がなくなり「もう限界だ」という声が広がり続けている。
このまま問題が放置されれば、同じようなストは今後も繰り返すと見える。「これ以上収入が下がれば、本当に一揆のような騒ぎになるかもしれない」と心配する市民もおり、東北の交通と暮らしをめぐる不安はさらに広がっている。

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