新疆アクス地区の女性が市場で包丁を買ったところ、思いもよらない対応に遭った。
店員から身分証の提示を求められ、さらに包丁の刃に自分の名前と身分証番号を刻まれてしまったのである。
店側は「使わなくなったら捨てず、必ず公安へ返却するように」と誓約書へのサインまで求めた。
「20年以上包丁を使ってきたけれど、名前を刻まれるなんて初めて」
女性は驚きと戸惑いを隠せず、その理由を知りたくて名入り包丁を撮影した動画をネットに投稿した。
寄せられた声は鋭い。
「お偉いさんたちは庶民が刃物を持つのが怖いのだ。自分たちが何をしてきたか、よく分かっているからだ」
刃物そのものより、刃物を手にする「民衆」を恐れているという指摘が相次いだ。
刃物の実名制は今に始まったものではない。
2010年の上海万博では、危険性のある刃物は指定売り場で身分証提示が義務化され、広州の2010年アジア競技大会では購入者情報の登録と毎週の派出所報告まで求められた。
2021年の中国共産党創立100周年(記念日7月1日)前後には、全国的に警備が強化され、身分証を持っていても包丁が買えない状態が続いた。市民が買えるようになったのは、式典が終わった7月2日以降であった。
こうした包丁規制はもともと新疆から始まった。新疆では何年も前から購入時の実名登録が義務になっており、さらに一本一本に購入者の身分証番号を刻む措置まで導入された。従わなければ没収や処分の対象となる。花火でさえ実名・数量制限が課され、この規制は他地域へも広がっていった。
ただの台所用品に、ここまで厳しい管理を重ねる必要があるのか。
その行き過ぎた慎重さこそ、当局が抱える「本当の恐れ」を映し出している。
包丁の刃にまで刻まれる「監視のしるし」その刻印が示しているのは、庶民の危険性ではなく、当局が抱える恐れの深さである。いったい何を守り、何を恐れているのか。

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