駐日中国大使館が登録呼びかけで噴出 「国防動員法」という見えざるリスク

2025/12/15 更新: 2025/12/15

12月8日、青森県近海で地震が発生したことを受け、駐日中国大使館は11日、在日中国人に対して、中国外交部傘下の「中国領事」アプリのダウンロード、または「中国領事」WeChatミニプログラムを通じた個人情報などの登録を呼びかけた。

表向きには自然災害への対応であるが、こうした情報収集の仕組みは、海外在住者や民間資産を国家戦略上の資源として把握する手段としても機能し得るとして、X(旧ツイッター)上では波紋を広げている。

中国の「国防動員法」は2010年に施行され、有事の際に民間資源や国民を動員する権限を当局が認める法律だ。この法律を巡っては、在外中国人の行動や資産が国家戦略上の対象となり得る点で、国際社会から懸念の声が上がっている。

国際社会の専門家らを悩ませている点が国防動員法の適用範囲や手続きの曖昧さである。同法では、国家安全保障や国防の名目で企業や個人の資源を徴用できると規定しているが、「有事」の定義や「徴用」の具体的手続きが明確ではない。

このため、中国共産党(中共)の判断次第で民間資産や外国企業の施設も対象となり得ると指摘されている。

高市早苗首相も2021年9月に自民党の山田宏参院議員のYouTubeチャンネルで、対中問題について聞かれた際「一番怖いと思っているのは、国防動員法」と述べ「中国の会社法、中国の共産党規約、国家情報法。この3つの法律については相当な危機感を持っている」と語っていた。

他国の機密情報や技術が中国に流出する恐れももたらす国家情報法を念頭に「法制度が絶対に必要だ」と語っていた。

国防動員法と海外資産の「収用」

国防動員法に関する大きな懸念される点の一つに、民間資産や企業の「収用」が可能な点がある。国防動員法第54条〜59条や国家情報法第14条〜17条により、中国当局は必要に応じて民間企業や個人の資産を国家防衛や安全保障の名目で収用でき、情報提供を義務付けることが可能だ。

中国国内では、民間企業が共産党の指示で軍需生産に転換される事例が報告されている。海外でも、同法や国家情報法に基づき、必要に応じて資産収用や情報提供が義務付けられる場合がある。

日本やアメリカでは、中国人や中国資本による土地・不動産取得が戦略的懸念として注目している。過去には沖縄の無人島、北海道の基地近隣、長崎県のテーマパークなど、中国側が取得した土地が軍事施設に近接する例も報告されており、レーダーや通信傍受、電磁妨害装置の設置などの軍事利用の可能性を指摘している。
時事評論家の唐浩氏は、「民間企業や個人による購入に見えても、中共当局や中共軍の意図が隠れている場合がある」と警戒を呼びかけている。

唐浩氏は、中共が海外との「制度の違い」を利用して、海外の土地や不動産を買いあさっており「いわば一種の『非対称戦争』ともいえる」と指摘している。

日本国内でも国防動員法や国家情報法(2017年施行)への懸念があり議論している。今年5月には、保守党の島田洋一衆院議員が国土交通・法務委員会連合審査会で「中国の法律では、海外在住の中国人も平時・有事を問わず国家情報機関の指示に従わなければならない」と指摘。「国際常識から見て極めて異常であり、安全保障上の脅威として評価すべきだ」と述べた。

これに対し当時の鈴木馨祐法相は「国籍だけで対応を決めるのは適切でないが、最適な対応策を検討したい」と応じている。

国防動員法は単なる国内法にとどまらず、海外在住中国人や海外資産にまで及ぶ権限を認める点で、国際社会にとって無視できない課題となっている。日本やアメリカをはじめとする各国は、こうした動きに対し、情報収集や規制、法整備の必要性を模索している。

エポックタイムズ記者。日本の外交をはじめ、国内外の時事問題を中心に執筆しています。
関連特集: 中国政治