高市総理 第2回日本成長戦略会議を開催 「17分野・8課題」の検討体制を確立

2025/12/25 更新: 2025/12/25

令和7年(2025年)12月24日、首相官邸において第2回日本成長戦略会議が開催された。高市総理大臣出席のもと、来年夏の成長戦略策定に向けた具体的な検討体制と、分野横断的な課題への対応方針が示された。本会議は、日本の国際競争力強化と持続的な経済成長を目指す重要な節目となる。

1. 第2回日本成長戦略会議の概要

今回の会議では、成長戦略の柱となる「17の戦略分野」と「8つの分野横断的課題」についての検討体制が固められた。高市総理は、官民連携による投資を迅速かつ効果的に進めるため、目標や政策手段を明確にした実効性のある「官民投資ロードマップ」の策定を各担当大臣に指示した。

また、令和8年度の税制改正大綱に基づき、高付加価値型の設備投資を強力に後押しする投資促進税制の導入が明言された。これは、一定規模以上の投資に対して「即時償却」または「7%の税額控除」を選択可能とするもので、年間約4兆円の投資誘発を見込んでいる。

2. 会議開催の背景:停滞する投資と人材のミスマッチ

成長戦略の再構築が急務となっている背景には、日本の産業が抱える深刻な課題がある。

  • 投資の停滞と競争力低下: 日本の民間企業設備投資や研究開発投資は、実質ベースで長年横ばいが続いている。主要産業(輸送用機器、一般機械、電気機器など)の世界シェアは2010年から2023年にかけて軒並み低下しており、資本生産性も主要国の中で低い水準にある。
  • 人材需給の歪み: 2040年に向けて、事務職が214万人余剰となる一方で、専門的・技術的職業(特にAI・ロボット活用人材)は326万人不足すると予測されている。現状、大学生の約半数が人文・社会科学系に集中しており、将来の産業需要とのミスマッチが懸念されている。
  • 労働供給制約: 人手不足が深刻化する中で、労働生産性の向上と、多様なニーズに応じた労働参加の確保が不可欠となっている。

3. 重点検討分野と体制

戦略の実行に向け、以下の二段構えで検討が進められる。

(1)17の戦略分野

AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティ、コンテンツ、海洋、防衛産業など、日本の勝ち筋となる分野が特定された。各分野にワーキンググループ(WG)が新設され、官民投資のロードマップが策定される。

(2) 8つの分野横断的課題

  1. 新技術立国・競争力強化
  2. 人材育成
  3. スタートアップ
  4. 金融(資産運用立国)
  5. 労働市場改革
  6. 家事等の負担軽減
  7. 賃上げ環境整備
  8. サイバーセキュリティ

特に「家事等の負担軽減」では、家事支援サービス等の品質向上と信頼性確保のため、国家資格化の検討や税制措置を含む支援の具体化が加速される方針だ。

4. 今後の予測とスケジュール

2026年(令和8年)に向けて、以下のスケジュールで具体的な施策が展開される見通しである。

  • 2026年1月〜3月: 各戦略分野のWGにおいて、現状の課題整理や企業ヒアリングが実施される。労働市場改革では、働き方改革関連法施行後5年の総点検結果が公表される予定である。
  • 2026年4月〜5月: 多くの分野で「官民投資ロードマップ(案)」が提示され、全体の中間整理が行われる。
  • 2026年夏: 成長戦略の取りまとめが行われる。あわせて、コーポレートガバナンス・コードの改訂や、能動的サイバー防御の進捗整理なども予定されている。
  • 2027年度以降: 家事支援サービスの国家資格化の実現や、高校教育改革に向けた交付金の創設などが予測されている。

政府は、本年度補正予算の6.4兆円に加え、令和8年度当初予算でも戦略分野への支援を積み上げ、切れ目ない投資促進を図る構えである。

エポックタイムズの速報記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。
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