政府 対日投資審査に「情報機関」関与 小林鷹之氏「さらなる死角」の克服

2025/12/29 更新: 2025/12/29

政府は、海外企業や外国人投資家による日本企業への投資について、安全保障上のリスクが高い場合、情報機関による事前審査を義務づける方針を固めた。重要技術やインフラが外国政府の影響下に置かれる事態を防ぐ狙いがある。

これを受け、自民党の小林鷹之政調会長(前経済安全保障担当大臣)は自身のXアカウントで、党主導で6年前から着実に進めてきた対日投資審査強化の成果を強調しつつ、さらなる「死角」を埋めるための自民党としての検討状況を明らかにした。

小林氏は、外資による日本企業への投資審査について、今年実施された外為法の政省令改正を継続的な強化策の一環として挙げた。今回の改正では、外国政府の情報収集活動に協力する義務を負う投資家等について、安全保障上重要な指定業種への投資を行う際、原則として事前の届出が義務づけられており、これにより、他国の情報活動の影響を強く受ける投資家は、日本の重要産業に参入する段階でチェックされる体制を強化する。

一方で小林氏は、報道にあるような省庁間の連携(日本版CFIUS)をさらに進めることの重要性を認めつつも、「他にもやるべき事がある」と言及している。

小林氏が指摘する、現行制度で検討が必要な「死角」は以下の2点だ。

①「事実上の支配下にある日本企業」への対応

日本企業による買収は原則として外為法の審査対象外だが、その買収主体となる日本企業が「外国政府の事実上の支配下」にある場合、国益をどう守るかが課題となっている。

②「間接的な保有」への審査

重要技術を有する企業の株式を保有する親会社が外国企業に買収されることで、結果的に技術が外国側の支配下に入るケースだ。現在はこうした事例が事前審査の対象となっておらず、制度の不備として自民党としてさらなる対応を検討している。

こうした党側での議論と並行して、政府は2026年の通常国会に外為法改正案を提出し、「日本版CFIUS(対日外国投資委員会)」を新設する方針だ。審査には財務省、経済産業省、国家安全保障局(NSS)に加え、内閣情報調査室や、新設が検討されている「国家情報局」などの情報機関が関与する方向で調整が進んでいる。

体制面では、財務省の審査担当者を現在の約70人から140人規模へ倍増させ、実効性の向上を図る考えだ。背景には、アメリカのCFIUSがこれまでに10件の買収阻止命令を出しているのに対し、日本での投資中止命令は過去1例にとどまっている現状があり、中国系企業などの関与を念頭に審査体制の強化が急務とされてきた。

日本版CFIUSの創設は高市首相の肝いり政策であり、自民党と日本維新の会との連立政権合意にも盛り込まれている。小林氏は「わが国の国益を守るための対策を、自民党が主導して形にしていく」と述べ、政府の動きに呼応しながら、さらなる制度の穴を埋める議論を加速させる考えを示している。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
関連特集: 国政