複数の中国共産党(中共)軍隊に近い関係者によると、台湾への武力行使をめぐって、習近平と軍の間には長年にわたり根本的な意見の隔たりがあるという。関係者は、中共軍内部では台湾攻撃に反対する見方が広く共有されており、特定の将官個人の意見ではないと指摘している。
軍隊に近い情報筋は大紀元に「中共軍隊では、実際に戦争になれば大量の死傷者が出て、軍全体が著しく消耗し、場合によっては一つの兵種が壊滅しかねないことを誰もが理解している」と語った。台湾周辺で軍事的な威圧や武力誇示を行うことと、実際に戦争を始めることとは、全く次元の異なる問題だという認識が共有されているという。
この情報筋によると、現時点では、台湾に対して高強度の軍事行動に踏み切るだけの、軍事的・戦略的条件が整っていないという。
「普段台湾周辺を航行して示威行動を取ることはできても、実際に戦闘となれば、その判断の責任を引き受けたい者はいない」
複数の軍関係者は、習近平が台湾への軍事行動を推進している背景について、軍の専門的判断というよりも、個人的な政治的思惑が大きいとの見方を示している。
中国南部のある戦区に所属する軍関係者の王氏は、「もし本当に戦争になれば、前線で命を落とすのは一般市民の子どもたちだ。プーチン氏のような指導者は後方にとどまり、前線に立つことはないが、失うのは庶民の家族だ。誰が戦争を望むだろうか」と語った。
王氏はさらに、ロシアによるウクライナ侵攻が4年目に入り、双方の死傷者が累計で100万人を超えているとされる現状に触れ、犠牲になっているのは、ほとんどが普通の人々だ。この現実を見れば、実際に作戦を担う将校の多くが戦争を望まなくなるのは当然だと述べた。
また、「台湾統一」は、中共内部の一部が歴史に名を残すための政治的目標として掲げている側面が強く、必ずしも多くの将兵の本音を反映したものではないという。王氏は、「一部の権力者は戦争によって個人の影響力を高め、軍事予算の拡大を図ろうとしているが、そうした考えは軍内部には広がっていない。我々の中に戦争を望む者はいない」と語った。
反腐敗が選別的に運用 異論封じの手段に
反腐敗についても、関係者は、軍内部の腐敗が個人の問題ではなく、長年にわたる構造的な現象だと指摘する。王氏は、「かつては昇進のための金銭授受が公然の秘密で、多くの将官が徐才厚の系統に利益を提供せざるを得なかった」と語った。
一方で、現在の反腐敗は選別的に運用され、異論を封じる政治的手段となっているとの見方が強い。最近失脚した張又俠や劉振立をめぐる問題についても、関係者は、表向きの汚職容疑が本質ではなく、台湾への武力行使構想に同調しなかったことが背景にあるとみている。
張又俠ら一部の軍高官への処分について、別の関係者である史氏は、「これは明らかに政治的なレッテル貼りだ」と述べた。
「台湾攻撃そのものも純粋な領土問題ではなく、政治的な狙いが強い。戦争に踏み切れば、徴兵や後方支援体制の整備が必要となり、結果的に上層部の権力は戦時体制へと移行し、集中・固定化しやすくなる」と指摘した。
史氏は、現在の中央軍事委が事実上機能不全に近い状態にあり、部隊内では厭戦感情が広がっているとして、武力による「統一」構想が実際に実行に移される可能性は高くないとの見方を示した。
「今は人心が乱れ、軍の士気も揺らいでいる。誰が自分の子どもを犠牲にしたいと思うだろうか」
深刻な血液不足 戦争後方支援の大きな課題に
複数の関係者は、仮に武力行使に踏み切った場合、後方支援能力が避けて通れない現実的な課題になると指摘している。とりわけ医療や物資供給の面で、大規模な戦争を支える体制が整っていないという。
福建省厦門市の医療関係者林さんは、「今でも血液は慢性的に不足しており、平時でさえ足りていない。大規模な衝突が起きれば、どうなるのか想像もできない」と話した。
林さんによると、現在の医療や献血の仕組みは通常医療を前提としており、大量の負傷者が一度に発生する事態には対応しきれない。「平時は調整や融通で何とかなるが、需要が急増すれば、まず現場の病院にしわ寄せが来る」と指摘した。
複数の中国本土の医療関係者も同様の見方を示しており、人口移動や高齢化の進行、献血者数の減少などにより、多くの地域で血液備蓄はすでに低水準で推移しているという。
こうした状況の中で、長期かつ大規模な医療・後方支援を必要とする事態が生じれば、まず地域医療が圧迫され、一般市民の医療体制にも直接的な影響が及ぶとの懸念が示されている。
高層部の動きが軍内の抵抗感情を強める
台湾情勢をめぐる外部要因について、ある関係者は、トランプ米大統領がかつて示した「習近平は台湾侵攻に踏み切れない」との見方に同意している。ただし、それは平和を重視しているからではなく、失敗した場合に政権が崩壊することへの恐れに基づくものだと指摘した。
中国の軍事学者・呉満氏は、米国が近年、各地で強硬な姿勢を示してきたことが、中共当局にとって現実的な抑止力となっていると指摘する。中共指導部が高官粛清や恐怖によって軍の統制を図ろうとしているが、政治的忠誠心を専門的判断より優先するこうしたやり方は、かえって軍内部の反発をいっそう強めている。
呉氏は、「仮に台湾への武力行使に踏み切るとして、誰がそれを担うのか。軍内部が協力しない中で、公安系統に軍を指揮させるつもりなのか」と皮肉を込めて語った。
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