中国の国営テレビ番組で放送されたある女性の発言が、今になって中国社会に強い不安と衝撃を与えている。
問題となっている映像は、2019年10月、重慶衛視のトーク番組「謝謝你來了」の一場面である。
この番組に出演した遼寧省出身の女性は、自身が受けた腎臓移植について語る中で、提供者が「3歳未満の子供だった」と明言した。
司会者が「どれくらい小さいのか」と確認すると、女性は「3歳にもなっていない」と答えたうえで、幼い提供者からの移植は「大人の臓器よりリスクが高く、難しい手術だった」と説明した。
番組はこのエピソードを「一つの命が、別の命の中で生き続ける感動の物語」として描いた。幼い提供者の母親からの手紙とされる文章も紹介され、スタジオはしんみりとした空気に包まれた。
しかし、その手紙は印刷された文面であり、内容も不自然なほど整った美談調であった。「運命に屈しないあなたを尊敬しています」といった表現は、番組の励まし路線にあまりに都合よく沿っており、後に番組を見返した視聴者からは「本当に存在した手紙なのか」という疑問の声が上がった。
当時、この番組が問題視されることはなかった。
だが近年、中国で臓器移植をめぐる疑念や、子供の失踪問題が繰り返し注目される中、この映像が再び掘り起こされ、3歳未満の子供が臓器提供者となった背景や同意の過程が、番組内で十分に説明されていなかったのではないかと疑問を投げかけている。
実際、中国の動画投稿サイトで検索すると、「乳幼児の腎臓移植の利点」をうたう医療系の宣伝動画が次々と表示される。一部の医師は、幼い子供から大人への移植手術が「すでに珍しいことではない」と語っている。
この幼い臓器提供者は、いったいどこから来ているのか。事故死なのか、病気によるものなのか、そして家族の同意はどのように確認されたのか。番組は、そうした重要な点を一切詳しく説明していない。

近年、中国では臓器移植をめぐる問題が、医療の枠を超えて議論されるようになっている。法輪功学習者、良心犯、ウイグル族といった人々が、意思に反して臓器を奪われてきたのではないかという疑惑は、長年にわたり国際社会で指摘されてきた。ここ数年はさらに、乳幼児や子供を対象とした臓器供給の構造そのものに疑いの目が向けられている。
特に人々の不安をかき立てているのが、代理出産と臓器需要の結び付きである。
中国国外では、臓器を必要とする患者のために子供を産ませる目的で、中国系犯罪組織が女性を支配下に置き、代理出産を行わせていた実態が明らかになっている。
代理出産だけではない。中国各地で近年、子供や若者が突然姿を消す事例が相次いでおり、その多くは依然として行方不明のままで、理由は説明していない。
一方、中国を訪れた患者が、臓器移植の申請からわずか数週間から1か月前後で手術を受けられるという、他国では考え難い状況も存在する。
この異常な速さを、偶然の提供だけで説明することは困難である。
失踪する子供や若者、詳しく語られない移植手術、感動話として消費される幼い命。
それぞれが一本の線で結ばれた明確な証拠は今のところない。
しかし、異常な移植件数と行方不明者の多発という現実の中で、多くの人々が直感的に「何かがおかしい」と感じており、見えない臓器供給の構造が存在するのではないかという不安が広がっている。
それにもかかわらず、臓器移植はこれまで「医療の進歩」や「命をつなぐ善行」として語られることが多かった。だが、その臓器がどこから来たのか、なぜ短期間で入手できるのかについては、国内外から繰り返し問いかけられてきたものの、中国当局が具体的な説明を行ったことはない。疑念だけが積み重なってきたのである。
かつて感動美談として放送された国営テレビの一場面が、今あらためて強い違和感をもって見返されているのは、人々が、もはや「知らなかったふり」や「美談による納得」を受け入れられなくなっているからである。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。