中国で「暴力事件が1日数百件」と消息筋 治安実態と公式発表に乖離

2026/04/24 更新: 2026/04/24

中国各地で、一般にはほとんど知られていない規模で凶悪な暴力事件が相次いでいることが、同国の内部治安体制に詳しい関係者の証言で明らかになった。

公式発表に至る事例はごく一部にとどまる一方、実際にははるかに多くの事件が水面下で発生しており、中国共産党最高指導部への社会からの対応不足を示唆する一定の圧力が高まっているという。

関係者の一人は、刺傷事件や車両による突入事件などが全国で1日に数百件規模に上り、その大半が公表されることなく抑え込まれていると指摘した。

取材に応じた複数の関係者は報復を恐れ、匿名または姓のみの公表を条件とした。

これらの証言は、現実に起きている事態と当局が公にしている情報との間に大きな乖離があることを示唆する。同時に、当局の対応が情報統制や監視強化に重点を置いている可能性も浮き彫りにしている。

とりわけ、無差別に市民を狙う「社会への報復型」とされる襲撃事件への懸念が強まっている。内部関係者の魏さんは、こうした事件が件数・地域ともに拡大していると指摘する。

「内部で把握されている情報によれば、中国本土では毎日、数百件の刃物による襲撃が発生している。そのうち、無差別の重大事件も日々数十件に上るが、公にされることはない」と魏氏は述べた。

魏さんによると、このように急増している状況は、法執行や国内治安を統括する党の政法系統を中心に高官らを強く警戒させている。このため、中央政法委員会と公安部は最近、全国的な調査を命じる内部通達を連名で発出した。

通達では、陳情者や未解決の不満を抱える人々、「恨みを抱いている」とみなされる者、「過激な傾向」を示す者など、潜在的リスクと見なされる人物の特定と監視を強化するよう指示されたという。

同時に検閲も一段と強化され、動画や目撃証言、内部情報などがインターネット上や海外プラットフォームに拡散する前に速やかに削除されているとされる。

相次ぐ事件と食い違う情報

最近の複数の事件は、関係者が指摘する「暴力発生後に情報が限定的または錯綜する」という傾向を裏付けている。

今月19日、福建省南安市水頭鎮で車が群衆に突入し、当局は2人死亡、1人負傷と発表、運転手を拘束したとした。しかし、中国版SNS「微博(ウェイボー)」上の目撃情報では、現場で「少なくとも4人が死亡した可能性がある」との指摘も出た。

ネット上に出回った映像では、白いセダンが交差点を高速で通過後、突然左折して対向車線に突入し、中央分離帯を突き破って複数のオートバイに衝突する様子が確認されている。

また、3月29日には北京市房山区で、ブルドーザーが農村部の市場の群衆に突入したとされる重大事件が発生した。当局は公式には認めていないが、複数の住民が大韓集市場で重大な出来事があったと証言した。

中国のSNSに投稿された目撃情報(現在は削除済み)では、少なくとも7人死亡、最大で13人に上る可能性があるとされ、約10人余りが負傷したとの指摘もあった。関連する動画や報道は速やかに削除された。

このほかにも、各地で類似の事件が断片的に報じられている。

3月26日には広東省深圳市の羅湖区と龍崗区で相次いで刃物による襲撃が発生し、複数の死傷者が出た。うち1件では、女が2人を殺害し、14歳を含む3人に重軽傷を負わせたとされる。

3月31日には湖北省武漢市江岸区で、44歳の男が果物ナイフで通行人を襲い、警察の発表では4人が負傷したが、ネット上の目撃証言では実際の被害はさらに大きいとの指摘があった。

4月4日には遼寧省瀋陽市和平区の太原街付近で、6人死亡、10人以上負傷とする情報がネット上で拡散した。加害者はその後、建物から飛び降りて死亡したとされるが、当局はこれらの数字を確認していない。

これらの事例の多くで、公式情報の不足やオンライン上の投稿の迅速な削除により、被害の全容把握は困難となっている。

当局への圧力

広東省深圳市の元公務員である潘さんは、一連の事件の増加が党の政法系統に大きな圧力を与えていると指摘する。

「上級当局は、地方政府が基層レベルの社会矛盾に対処する上で職責を十分に果たさず、対応も遅れたとみている。責任は否定できない」と潘さんは語る。

現在、地方当局には社会安定の維持を最優先とするよう指示が出されており、情報統制の一層の強化も求められている。内部通達では、敏感な内容が海外に流出するのを防ぐことが明記されているという。

欧州在住の中国人研究者である李さん、こうした暴力の背景には中国社会に蓄積された長期的な圧力があると分析する。

「権威主義体制の下で、地方官僚は資金確保を優先し、基本的な民生問題への対応が後回しにされている。この構造的な歪みが、とりわけ社会の下層にいる人々を限界へと追い込んでいる」と指摘した。

その結果、「社会への報復」とも言える個人的な暴力行為が明らかに増加しているとする。

李さんは、こうした動きは歴史的にも前例があり、個別の暴力事件が広範な社会不安の兆候となり得ると指摘。その上で、現在の当局の対応は根本的な問題の解決にはつながらないとの見方を示した。

「根本原因が抑え込まれ続ける限り、統制を強めるだけではこの種の事件は止まらない。事態は収束せず、今後も繰り返されるだろう」と述べた。

カナダを拠点とする記者。アジア太平洋ニュース、中国のビジネスと経済、米中関係を専門としている。
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