「黄社長が個室でお待ちです(黄総請你去包廂)」
中国・杭州の飲食店で、一人で食事をしていた女性は、店員から突然こう声を掛けられた。
店員が使った中国語は「黄総(ホアンゾン)」黄という姓の男性を「社長」と呼ぶ表現で、店員は「黄社長が個室に来てほしいと言っています」と女性に伝えた。
なお、中国でいう「包廂(バオシアン)」と呼ばれる個室は、一般席とは扉で仕切られた独立した空間を指すことが多い。女性はその男性にまったく心当たりがなく、見知らぬ男性から個室へ来るよう求められたことに不審を感じ、誘いを断った。
しかし女性によると、その後から料理がなかなか運ばれなくなり、呼び出しボタンを押しても店員は来なかった。その後、女性がスマートフォンでライブ配信を始める構えを見せると、店員はすぐに現れ、止まっていた料理も次々と運ばれてきたという。
この動画はSNSで急速に拡散され、「店員が見知らぬ男性の誘いに協力している」「誘いを断った客への嫌がらせではないか」「個室へ行くよう圧力をかけようとしたのではないか」といった批判が噴出した。
世論の炎上を受け、当局も事実関係の調査に乗り出した。その後、「黄という男性が女性を知人と勘違いし、店員に伝言を頼んだだけだった」と説明し、店側は女性に謝罪するとともに、営業を一時停止して従業員教育を実施すると発表した。
しかし、この説明はかえって疑念を強めた。女性が公開した動画では、店員は誘いを伝える前に「お一人ですか」と確認していたため、「本当に知人と勘違いしたのなら、なぜ一人かどうかを確かめる必要があったのか」「知人なら本人が直接声を掛ければ済む話ではないか」といった疑問が噴出。
公式説明への批判は中国SNSのトレンド入りし、「黄総請你去包廂(黄社長が個室でお待ちです)」は、権力や立場を利用して女性を個室へ呼び出そうとする行為を皮肉る流行語となった。
この事件が中国で大きな波紋を呼んだ背景には、2022年に飲食店で男性の誘いを断った女性が集団暴行を受けた「唐山事件」など、女性が公共の場で身の危険を感じる事件が社会に大きな衝撃を与えた記憶がある。
そのため多くの人が問題視したのは、見知らぬ男性の誘いを店員が取り次いだことだけではない。女性が断った後に店の対応が変わったと訴えていることや、当局がそれらの疑問には十分答えないまま「人違い」と説明したことが、「女性は一人でも安心して外食できるのか」という不安と不信感をさらに強める結果となった。
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