中共 AIの「開放・普及」を強調 米国は中国モデルの技術侵害を調査

2026/07/24 更新: 2026/07/24

ベッセント米財務長官は、中国のAIモデルがアメリカのモデルを無断で「蒸留」していないか調査する方針を明らかにした。海外で開発されたAIモデルが米企業の技術成果を不正に利用していることが判明した場合、米政府はこうした行為を理由に制裁を科す権限があるとしている。

上海で開かれた世界AI大会では、中国共産党(中共)指導部が主導し、「開放と共有、恩恵の普及と包摂」を掲げるAIの新たな国際秩序を宣伝するとともに、グローバル・サウス諸国への働きかけを強めた。

ドイチェ・ヴェレは、習近平がAI分野で国家安全保障の概念を過度に拡大することに反対する姿勢を示したと報じた。アメリカには直接言及しなかったものの、中共が自らをAI新秩序の提唱者と位置付け、アメリカ主導の体制に挑戦しようとしていることは明らかだと指摘した。

ベッセント氏は7月21日のメディア取材で、トランプ政権が中国のオープンソースAIモデルについて、無断でモデル蒸留を行い、アメリカ企業のモデル性能や知的財産を取り込んでいないか調査すると表明した。知的財産の窃取が確認された場合、関係する中国のAI企業に制裁を科す可能性も排除しないという。

アリババの元ソフトウエアテストエンジニア、蔡暁麗さんは

「技術面では、中国企業がモデル蒸留を利用し、アメリカ製モデルの推論の仕組みを低コストで逆算し、模倣する近道を断つ狙いがある。政治・戦略面では、中核技術の流出を全面的に阻止し、中共がアメリカの技術成果を利用してデジタル独裁体制を強化するのを防ぐ目的がある。さらに、中共が国連などの国際舞台で、世界のAIガバナンスをめぐる主導権を握ろうとする動きの正当性を損なう狙いもある」と述べた。

AI開発における「蒸留」とは、性能の高い既存モデルの出力を利用し、より小規模なモデルを構築する一般的な性能最適化の手法である。

蒸留技術そのものは中立的なものだ。しかし、中共がアメリカのAI開発企業の利用規約に違反し、アメリカの最先端モデルから価値の高いデータを大量に収集して、その知的成果を短期間で複製した場合、公正な競争の一線を越えることになる。

台湾国防安全研究院の沈明室研究員は「アメリカがなぜこの時期に調査を打ち出したのか。最大の理由は、習近平が上海でAI関連の会議に出席し、中国が今後、オープンソースを活用するモデルを進める方針に言及したことにある」と指摘した。

「この方式は、DeepSeekのように、OpenAI関連の大規模データやモデルを利用し、蒸留などの手法によって短期間で先行企業に追い付き、中国独自のAIモデルを構築しようとするものだ。こうしたAIモデルは明確に法律に違反しているとは言えないものの、巧みに近道をするような手法であり、アメリカの技術や企業利益に大きな影響を及ぼしている」

中共当局は先ごろ、複数のテクノロジー企業を集めて会議を開き、未発表の次世代モデルを含む中国の最先端AIモデルについて、海外ユーザーによる利用を制限する可能性を協議した。

沈明室氏は「中国は、自国の技術が不足しているときには開放を主張し、その開放を通じて他国から技術や経験を吸収しようとする。しかし、他国の技術を模倣した後は、開放する必要がなくなる。開放すれば、自らの技術が何を模倣し、どこから盗用したものなのかが知られてしまうからだ」と語った。

また、「劣勢にあるときは協力を求めたり、他国の技術を盗んだりする一方、優位に立つと、自国の技術流出を防ぎ、他国が自国の技術を模倣することを制限する。これは中共政権の典型的なやり方である」と分析した。

蔡氏は、中国が海外ユーザーによるAIモデルの利用制限を検討している背景について、次のように述べた。

「技術面では、中共は、中国語の特定分野に関する学習データや監視アルゴリズムにおける独自の優位性、さらにはシステムの脆弱性が西側諸国に露呈することを警戒している。政治面では、大規模AIモデルに組み込まれたイデオロギーに基づく検閲の仕組みや中核データを、体制内に完全に閉じ込める狙いがある。また、先端AIや半導体技術を商品化し、アメリカに対抗するとともに、外交交渉に使う政治的な取引材料にしようとしている」

アメリカがこの時期に中国のAIモデルに対する調査を発表し、制裁の可能性に言及した直接のきっかけは、技術侵害への懸念だとみられている。

しかし、その背後には、AI技術をめぐる地政学的な対立や産業・ビジネス面での競争、さらに今後予定される米中協議を見据えた両国の戦略的な駆け引きがあるとの見方が出ている。

蔡さんは、「AIは間違いなく、超高性能半導体をめぐる究極の戦場である。半導体が決めるのは計算能力の物理的な限界にすぎない。一方、『スーパーソフトウエア』とも呼べるAIは、コンピューターが何を基準に判断し、どのような決定を下すかを直接左右する。AIは、将来の世界が、自由と民主主義に基づく開かれたアルゴリズムによって人類を支えるものになるのか、それとも独裁体制の検閲アルゴリズムによって人類を支配し、隷属させるものになるのかを決定する」と指摘した。

ロイター通信は21日、事情に詳しい関係者5人の話として、アメリカと中共が9月にAI問題をめぐる協議を行う予定だと報じた。

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