「あの、そこら辺で用を足す中国人がだよ?」
以前、日本人の知人が中国人について話す際、そんな言葉を前置きにしたことがある。同じ華僑として聞いていて心苦しく、今でも妙に耳に残っている。
今回、その言葉を思い出させるような出来事が起きた。
8月18日夜、マレーシア発上海行きのエアアジアAK1516便で、中国人とみられる女性が座席で排便したと複数の中国メディアが報じた。
同じ便に乗っていた男性は「ひどすぎる。まさか座席でするなんて」と怒りをあらわにした。女性は騒動後、周囲の乗客に謝罪しなかったという。
午前2時ごろ、眠っていた乗客たちは突然の悪臭で目を覚ました。当初は誰かが吐いたと思ったが、床にあったのは便だった。
女性は10歳前後の男児2人と座っていたため、周囲は最初、子どもの粗相だと思った。しかし子どもたちは「自分たちではない」と否定。最後に女性本人が排便を認め、「体調が悪かった」と説明した。
しかし乗客によれば、使用できるトイレはわずか5メートルほど先にあった。
客室乗務員が清掃したものの、便の一部はカーペットに染み込み、臭いは残った。着陸前には悪臭に耐えかねた乗客が通路に集まり、客室乗務員も鼻にティッシュを詰めて清掃する事態となった。
中国ではこれまでも、エレベーターやタクシー、観光地、公共交通機関など、本来なら考えにくい場所で用を足す様子がSNSでたびたび拡散され、そのたびに中国人のマナーが問題になってきた。
では、なぜここまでモラルが崩れてしまったのか。
中国には古くから、礼節を重んじ、恥を知り、人として正しく振る舞うことを大切にする道徳観があった。
しかし中国共産党の統治下では、無神論や共産主義の思想教育が長年続き、伝統的な信仰や道徳は否定されてきた。「何が善で、何が恥ずべきことか」という、人の行動を支える価値観そのものが、世代を重ねるなかで失われていった。
そして、その積み重ねの先にあるのが、今の中国社会ではないだろうか。
機内の座席で用を足すという、にわかには信じがたい光景。その背景を「中国人のマナー」の一言で終わらせず、中国社会がこの数十年で何を失ってきたのかまで考えてみる必要があるのではないだろうか。
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