世界を買い込む 中国大陸の観光客(三)

2010/09/21 更新: 2010/09/21

【大紀元日本9月21日】秋葉原の電器街、いたる所で聞こえてくる中国語。銀座の高級店で、中国人に一掃されたため入手困難となったブランド時計。ニューヨークの5番街で、大金を惜しまず競ってブランドバッグを買い、豪州で贅沢な住宅と土地を購入する中国人。世界を買い込む中国大陸の観光客たち。

一方、中国大陸から日本にやってきた観光客は、「米国、韓国へ行く観光客と気持ちが異なる。それは、日本は中国の対戦国だからである。中国人は愛と憎しみの混じったこの感覚を抑えづらい」とある華人のガイドはこう語る。9月第188期の海外中国語週刊誌「新紀元」は、世界各地を飛び回る中国大陸の観光客の様相を描いた。

2007年12月、中国公民外国旅行目的地(ADS)の許可を得たアメリカや、2009年7月に中国の富裕層(年収25万元以上)を対象に個人観光ビザの発給を開始した日本、また、今年夏から中国人への観光ビザ発行条件を緩和すると発表した韓国など、経済低迷中にある世界各国政府は知恵を絞り、中国人向けの観光市場を「経済回復」の一策として、中国という巨大市場を狙っている。

本サイトでは4回に分けて、ヨーロッパ、ニューヨーク、日本、豪州を訪れたこれらの中国人観光客を紹介する。第一回の中国人観光客の新たな観光傾向と第二回のニューヨーク5番街で買い物をする中国人観光者に続き、今回は日本にやってくる観光客と豪州で不動産購入に大金を惜しまない中国人を紹介する。


日本ツアーの愛と憎しみ
@文・浦慧恩

「中国人の購買力には圧倒される。日本でのショッピングは、自分の身分を誇示する

中国からの観光客が目指す日本の電化製品(Getty Images)

手段でもあるかのようだ」と日本の観光庁は捉えている。各国の政府が「経済復旧」のため、頭を痛め、全力を尽くしている中で、中国人観光という巨大なマーケットを受け入れれば、経済を挽回できるかのようだ。中国人は海外で不動産を購入したり、国債などを購入したりしているが、その規模も、人々を唖然とさせている。かつて「世界工場」と呼ばれていた中国が、「世界市場」に変身したかのようだ。

日本観光庁が、初の抽出調査の結果を8月25日に公表したところによると、中国人観光客は1人当たり平均13.7万円を消費している。統計によると、2009年に海外を訪問した中国人観光客は、2008年に比べて5.2%増にあたる4,220万人にのぼり、2001年の700万人弱をはるかに超えた。同時に総支出額は、2008年から16%増えた420億米ドルに至った。

しかし、これらの数字は、中国人が本当に豊かであることを裏付けるものではない。2007年の中国の人口は世界首位の13.3億人。世界人口の19.9%を占める。日本は1.3億人(約1.9%)。今年8月、中国政府が対外に公布したGDPは、1兆3,390億米ドルで、日本の1兆2,880億米ドルを追い越した。しかし平均すると、1人頭の中国の平均は約4,000米ドルで、日本は40,000米ドル。つまり、中国は日本の十分の一に過ぎない。

気が狂ったようなショッピング

調査によると、大多数の中国人観光客は、宿泊条件への要求はあまり高くない、しかも、宿泊用のお金を節約してショッピングに使うことを希望している。「気が狂ったようなショッピング」は、すでに中国人の海外観光客のシンボルになっている。今年6月、日本の主要空港と港から出国した3, 787名の外国人観光客に対して口頭調査を行ったところ、日本で平均10.4万円消費していた。国別に分類すると、ロシア人が最も多い17.4万円、次いでフランス人の15.2万円。しかし、この二国の観光客の大多数は、日本での滞在日数が比較的長いビジネスマンであるため、観光庁は「短期在日の観光客の中では、中国人観光客が実質的に首位を占める」と見解している。

各国の観光客を、消費額順に並べると、中国大陸、韓国、台湾、米国、香港となる。お土産買いへの平均支出額は、1人当たり4.8万円、しかし中国大陸からきた観光客は10.1万円で 平均額をはるかに超えている。中国大陸からの観光客は特色のあるお菓子以外、化粧品、医薬品、カメラ、時計、電気部品などを常に購入している。また、彼らを最も安心させるのは、中国と違って、毒の入ってない食品と薬物を買えること。

しかし、この成り行きが持続できるかは、香港から大陸の観光客を連れて日本にやってきたガイド・許さんが首を傾げるところだ。彼は「中国人が出国して観光に訪れることを望んで、各国がビザ発給の条件を下げたため、ショッピングのレベルと数量は次第に低下してきた。最終的には日本政府が予測する消費金額に至らないかもしれない。実際購買力があるのは、年に何回も出国して観光する限られたお金持ちであり、数は極めて少ない」と語った。

現在、大陸からの観光客は主に「狂ったようなショッピング」をしていて、各国の文化の特徴を吸収するような精神的な旅とはほど遠い。これに対して、ヨーロッパのガイドは、状況は変わると見ている。「(大陸)観光客が、現在ののようにルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)の店でバックを買いまくる時期を経て、将来は、ルーブル美術館を見学するために、あるいはチョコレートの作り方を学ぶためにパリを訪れ、文化を享受する旅をするようになるだろう」 という認識だ。

大陸の観光客と比べて、香港と台湾から来た観光客は日本の文化を嗜むことを重んじる

大陸の観光客と比べて、香港と台湾から来た観光客は日本の地味な文化を味わうことを大切にする。

。小村の風景に臨んで、ユートピアの文化を味わう旅が好まれる、とガイドの崔さんは語っている。

日本ツアーでの愛と憎しみ

ガイド経験7年の中国人ガイド・崔さんは、中国大陸、香港、台湾から日本を訪れる観光客の微妙な心理状態をいろいろ体験してきた。「日本に来る観光客は、米国、韓国へ行く観光客とは面持ちが異なります。日本が中国の対戦国だったからで、中国人は愛と憎しみの混ざった感覚を抑え難いようです」と語り、中国人の抱える憎しみは特殊なもので、香港や台湾の人々にはこのような憎しみは少ない、と解説する。また、大陸から来た観光客は世話をしづらいことも話してくれた。中国大陸で成長した中国人は、戦う環境の下で長年生活してきたため、常に人と戦う習慣がついており、自分の知恵や強さを主張するからかもしれない。

中国本土からの観光団がガイドに会った時、最初に尋ねる言葉は「あなたは日本人ですか」である。ガイドが100%中国人であると分かれば、相手との距離感は薄くなる。中国人と中国語が流暢な日本人は、中国人観光客をさらに安心させる。続いて海外での礼儀、常識、プライベートなどは、中国人観光客が最も関心をもつ部分である、例えば、給料はいくらか、結婚しているか、ボーイフレンドはいるかなどプライベートな問題を尋ねまくる。「香港と台湾からきた人は普段これらの問題を聞かない…」と崔さんは語った。

(翻訳編集・李YS)


豪州、ニューリッチの避難所
@文・李暁宇

中国本土のニューリッチが観光する際、オーストラリアを優先に選ぶ傾向が

(Getty Images)

強い。調査によると、2010年度上期だけで、36万人の中国人本土観光客がオーストラリアを観光し、23億ドルの外貨消費が計上されている。

これらのニューリッチにとって、オーストラリアの人気の理由は、独特な自然環境だけでなく、オープンな不動産投資市場にもある。私財の避難所としての可能性があるわけだ。

金融危機の影響を下げるため、オーストラリア政府は2008年末から不動産投資の制限を次々と撤廃し、海外の投資家も不動産を100%独自に購入できるようになった。これにより、多くの投資家の仲介業者が、中国の北京、上海で事務所を設け、不動産投資のバブルがいっそう加速した。

移民担当のDavid弁護士によると、制限が解除されるまでは、シンガポール人、インドネシア人が海外投資家の大半を占めていたが、今では中国人が主要な投資家になっているという。「シドニー・モーニング・ヘラルド」によると、元中国国家主席の曾慶紅氏の息子が2008年、3,240万豪ドル(約250億円)の豪邸を購入したが、この購入額は今でもオーストラリア史上3位の高額豪邸にランクインしている。また、ある中国人の女性商人が、1,936万豪ドル(約160億円)の大金で、メルボルン東部にある900平米の豪邸を購入したことも有名だ。

不動産売買の記録を見れば、中国人投資家は100万豪ドル以下の物件には興味がないようだ。不動産会社Marshall Whiteは、150万豪ドルの不動産売買を中心に販売する中で、中国人バイヤーが全体の20%を占めているという。そして中でも中国人の留学生による購入が目立つ。ある不動産代理店の担当者によると、有名な私立大学の周辺、例えばWesley Collegeの周辺を見れば分かるのだが、中国人留学生が多くの物件を持っていることが分かる。2009年3月、オーストラリア政府が留学生に対する不動産購入の限定額(30万豪ドル)を解除してから、中国人留学生による不動産の購入が著しく増えた。

(AFP)

中国人によるオーストラリアの不動産への投資現象について、専門家は次のように指摘している。多くの中国人は、自国の政治が非常に不安定なため、資金を中国から海外に移動させる。中国人は常に、政府の政策によって財産が奪われるリスクに晒されており、財産が安全に保管できるところを探す中で、経済が安定しているオーストラリアが選ばれているという。

なお、中国人の購買力がオーストラリア地元住民の危機意識を喚起したかのように、「オーストラリア人にも不動産を」というスローガンが叫ばれるようになった。このような民意の圧力に屈した政府は、2010年4月23日、海外からの投資への制限規定を発布し、外国人による不動産購入にあたって、購入主の事前審査が行われるようになった。

(翻訳編集・山本)

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