中国共産党政府は、西側諸国の民主主義を利用し、民主主義を破壊しているとオーストラリアの学者が警告している。
豪チャールズ・スタート大学公共倫理学教授クレイブ・ハミルトン氏の著書、「サイレント・インベージョン(静かなる侵略)が話題だ。2018年2月出版された同著書では、豪州に移住した中国人富豪が現地企業や政治家に巨額献金し、中国に有利な世論や政策を作り出したという浸透工作を明かす。
ハミルトン教授は著書のなかで、中国共産党がどのようにオーストラリアへ浸透していくかを実例を挙げて解説する。例えば、世界に点在する中国系組織の利用、入札や取引に便宜を図るなどの賄賂、統一戦線部がコントロールする中国人留学生とスパイ工作など。
また、自由貿易協定(FTA)や南シナ海問題でも「中国は米国を脅かすことはできない。だから米国の同盟国に対して圧力をかけている」と説いた。
経済では、自由主義と民主主義の元で、合法的な取引を通じ、オーストラリア企業をチャイナマネーで制圧し、中国の共産主義思想を浸透させる。「オーストラリアの自由を守りたければ、中国の侵攻を防がなければならない」と主張した。
豪スカイニュースによると、ハミルトン教授の著書は当初、大手出版社Aleen&Unwinと出版契約を結んでいたが、中止され、その後も2社から断れたという。著書には個人名や組織名も明かされている。中国からのサイバー攻撃や在豪中国人の訴訟を恐れたためだと教授はみている。 「学術論文が圧力を恐れて発表できないとは遺憾だ」と教授は述べた。
高まるオーストラリアと中国間の緊張
ここ数カ月間、オーストラリアと中国の緊張は高まっている。
豪紙フィナンシャル・レビュー4月11日付によると、中国当局はターンブル首相を含む豪政府関係者らのビザ発給を拒否した。
この一因は、ターンブル首相が2017年12月、外国からの政治献金を禁止し、スパイ取り締まり法を強化すると発表したことにある。 中国を念頭にした外国勢力の干渉と影響力の拡大を抑止するためだ。
2018年5月、成競業オーストラリア中国大使は、両国の亀裂は中豪貿易関係に影響を与える恐れがあるとし、 中国に関する「無責任で否定的な」発言やコメントは「中国の国民の目には、オーストラリアのイメージには有害」とのべた。 また、オーストラリアは「相互信頼を高める」ために努力すべきだと主張した。
中国国営紙・環球時報は、近年のオーストラリアの行動は「過去2年のなかで反中パイオニアだ」と批判を展開。「キャンベラ(豪州首都)は中国との関係を悪化させる余裕などない」と酷く非難した。
中国の華春瑩外交部報道官は、ハミルトン教授の著書について「悪意あるでっち上げ、中傷」と批判した。さらに「人種差別主義であり、悪意ある反中思想の持主」と罵倒した。
また、50人以上のオーストラリア居住の中国系言論者は「中国共産党と政府の手法を輸出しているとの証拠はない」とし、ハミルトン教授を「在豪反中思想を扇動している」と批判する公開書簡を出した。
ハミルトン教授は、こうした学術界からの圧力で、中国の脅威を感じとったオーストラリアの大学でさえも、沈黙していると指摘した。「オーストラリアの大学は、現在、中国との金銭的な流れに深く結びついているため、西側のアカデミーとして創設当時の原則を忘れてしまった」と述べた。
ハミルトン教授は、中国の浸透工作に危機感を示し、外国献金を禁じスパイ取り締まりを強化したターンブル首相の姿勢を「世界のモデルケースになりうる」と評価した。著書の中では、世界的な影響力を拡大する中国共産党政権に警戒心を抱かなければ、各国は「悲惨な結果をもたらされるだろう」と警告している。
(編集・佐渡道世)
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