中国のネットでロシア批判文章、露政府系メディアが異例の報道

2018/07/05 更新: 2018/07/05

中国版Twitter「微博」などのSNS上ではこのほど、中ロ関係とプーチン大統領を猛烈に批判する記事が投稿された。記事では、ロシアが「遅れた技術で中国国民に損害をもたらす」との見方が示された。一方、ロシア政府系メディアが同記事について報道し、同国世論から注目された。米ボイス・オフ・アメリカ(VOA)が6月30日報道した。

ロシア技術に不信感

プーチン大統領が6月上旬に訪中した後、ロシア側は中国との間で、江蘇省にある田湾原子力発電所の7、8号機と、遼寧省の徐大堡原子力発電所の3、4号機の建設契約を結ぶことに成功した。

徐大堡原子力発電所の稼働中の1、2号機は、米原子炉メーカー大手のウェスチングハウス(WH)の技術が採用されていた。中国国内では、米中貿易摩擦の激化で、米国技術の代わりに、ロシア企業が3、4号機の設置を担うことに注目が集まった。

中国のSNS上では6月11日以降、『ロシアの遅れた技術で中国国民にひどい損害を与えるな』とのタイトルを付けられた評論記事が広くシェアされた。

ペンネーム「猫爪」が作成したこの記事では、中国の原発建設に米国技術の代わりにロシアの技術を採用したことに「驚いた」と示された。1986年に旧ソ連で発生したチェルノブイリ原発事故がもたらした危害などを挙げ、ロシアの技術は「危険だ」と主張。また、世界500強企業にランクインしているロシア企業は、石油と金融分野に集中し、製造業は見当たらないとした。

また同記事では、ロシアがインドに売却した戦闘機が「よく墜落する」などと指摘し、ロシアの軍事技術にも強い懸念を示した。現在国際情勢において、「(中国当局が)ロシアとより友好な関係を構築し、いわゆる同盟関係を結ぼうとしている。しかし、中国国民を実験用マウスにするな」と批判した。

同時に、中国当局は数年前から、ロシアとの間で長期の原油供給契約を締結している。記事は、ロシア側が提供した原油の価格は米国と比べて高く、「プーチン政権は、中国への原油供給でぼろ儲(もう)けしたカネで維持されている」と強い不満を示した。

ロシア政府系メディアが転載

VOAの報道によると、ロシア政府系メディア「スプートニク」電子版が、この批判記事をロシア語に翻訳し掲載した。

スプートニクは、ロシア政府から出資を受ける対外プロパガンダメディア「ロシアの今日」の傘下報道機関だ。

この報道に対して、ロシア人ネットユーザーが、「中国人にどのように見られているのか、分かる」と冷静に受け止めている。

ロシア著名ブロガーのルスタム・アダガモフ氏はVOAに対して、中国人ネットユーザーの記事が「ロシア技術をひどくけなしたことに衝撃を受けた」と話した。しかし、「最も驚かせられたのは、プーチン政権のプロパガンダ工作を担当する国営通信社が、これを転載したことだ」とした。

「ロシアの今日」のトップを務めるドミトリー・キセリョフ氏はこれまで複数回訪中したことがある。「ロシアの今日」などは、中国政府系メディアとの交流を頻繁に行っているという。

中露間の領土問題

 

一方、中国国民は、中国とロシアとの領土問題に最も関心を寄せている。

今年5月、在中ロシア大使館の公式微博アカウントで、中露領土問題をめぐって、中国人ネットユーザ―と大使館の微博投稿担当者との間で激しい論戦が繰り広げられた。

きっかけは、5月17日、ベトナム沖の南シナ海で、ロシア企業とベトナム企業が共同で石油の採掘を開始したことだった。採掘場所は、中国当局が領有権を主張し独自に設けた「九段線」の内側だという。

ロシア大使館の微博アカウントに非難のコメントが殺到した。また、過去の歴史を挙げ、現在ロシア領となっている図們江(豆満江)の出海口の土地と、ウラジオストック(中国名は海參崴、ハイシェンワイ)を中国に返還すべきだとの書き込みが多くみられた。

これらの書き込みに対して、大使館の担当者は中国語で「ただの妄想だ」「いつまで続くのか」などと反発した。その後、このやり取りは削除された。

2011年12月、ロシア大使館が微博アカウントを新設した際、中国人ネットユーザーも領土問題と、過去旧ソ連が中国に共産主義を輸出したことで批判のコメントを書き込んだ。

中国国民の間では、中国の領土を多く実効支配したロシア政府に媚(こ)びる中国当局への不満が高い。中国軍機関紙「解放軍報」は過去、「一部の人が西側のメディアと共謀して、領土問題で国内の反露論調を高め、歴史上の憎しみを煽動し、中露関係を破壊しようとしている。これには下心がある」との評論記事を発表したことがある。

江沢民政権では1991~2001年までの10年間に、旧ソ連とロシア連邦政府との間、「中露東部国境画定協定」などの領土密約を相次いで締結した。この結果、約344万平方キロの国土がロシア領になった。

(翻訳編集・張哲)

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