米ニューヨークに本拠地を置く非営利独立系メディア、新唐人テレビ(NTDTV)は昨年12月、カナダの制作会社・新境界影視と共同制作した長編アニメーション・ドキュメンタリー「扶揺直上(邦訳:つむじ風にのって、英語名:Up We Soar)」を公開。日本語字幕版は2月5日、大紀元日本のYouTubeチャンネルで公開された。
「あのオオトリ(鵬)が北海から南海まで飛び続けられる。扶揺(フーヤオ)というつむじ風に乗って、9万里の高さまで飛べる。しかし、風が一番強い6月まではそうはいかない。これが即ち『扶揺直上九万里(扶揺に乗って九万里まで上がる)』」
冒頭場面のセリフは今から約2300年前、中国の戦国時代の思想家・荘子の著書『逍遥遊』からの抜粋だ。絶対的な自由無碍な境地を求める荘子の心境を表わしている。
実話をもとにしたこの映画の主人公は扶揺(フーヤオ)と名付けられた中国に住む7歳の少女。両親が信仰のために投獄された10年近くの間、扶揺が学校でのいじめや差別、孤独、成長期の悩みを生き抜いていく感動的な物語。現代でありながら、自由のない閉塞感漂う社会を舞台に、少女と母親が刑務所の高い壁を乗り越え、支え合いながら成長していく姿を描いた、勇気と愛と忍耐のドキュメンタリー。
アニメ界でも高い評価を得ている「扶揺直上」。CINANIMA映画祭(ポルトガル)、SPARK映画祭(カナダ)、トーマス・エジソン・ブラック・マリア映画祭(Thomas Edison Black Maria、アメリカ)、Tindirindis映画祭(リトアニア)など、数々の権威ある国際アニメーション映画祭に選出された。昨年12月、ロサンゼルスアニメーション映画祭(LAAF)で最優秀長編賞を受賞した。
しかし、真実を語る声を黙らせる中国共産党の影が至る所にはびこっている。「扶揺直上」の制作陣は、アメリカ東海岸のある国際ドキュメンタリー映画祭に応募した際、不可解な出来事があった。制作チームは大紀元のインタビューで事件の経緯を語った。
エントリーして間もなく、制作チームには落選の連絡が入った。しかし、その数日後、審査委員長から「審査員たちは貴社の応募作品を高く評価し、入選を決定した。しかし、残念ながら説明のつかない理由で落選となってしまった。このような形でしか敬意を表することができず、本当に申し訳ない」という手紙が届いた。
「扶揺直上」は同映画祭のホームページに「準決勝中」と表示されており、「入選作品」には入っていなかった。代わりに、共産中国を賛美する中国本土のドキュメンタリーが入選作品に選ばれた。
「扶揺直上」の制作陣
本作の共同制作会社であるカナダ・トロントの新境界影視有限公司(New Realm Studios Inc.)は2010年に設立され、テレビ番組や映像コンテンツの制作に携わる制作会社である。同社の作品は、インディペンデント映画祭(IIFA)の金賞や、アコレード映画祭の優秀賞などを受賞している。
監督である馬琰(マー・イェン)氏は、カナダの映像制作会社でアートディレクターとして活躍した。2014年からは新唐人のドキュメンタリーシリーズ「伝説の時代」の監督を務めている。
美術監督を務める郭競雄(グー・ジンション)氏は、中国および欧米で卓越した漫画家と出版プロデューサーとして名を馳せる。2006年にはアングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞、2010年にはICONコミックフェスティバルでビューワーズ・チョイス賞を受賞した。
音楽は、カナダのトロントを拠点に活動する作曲家でチェリストのサミュエル・ビッソン(Samuel Bisson)氏が担当。ロックやポップバンドのオーケストラ伴奏の編曲や、アニメや実写映画の音楽を手がけている。彼が制作した音楽は、カナダ国内の多くのオーケストラで演奏されている。
制作チームは、「善の力を届け、声なき者のために語る」というミッションのもと、「扶揺直上」(中国語版と英語版)の無料公開を決定した。新唐人テレビのウェブサイトや、大紀元(エポックタイムズ・ジャパン)のYouTubeチャンネルで視聴できる。
(翻訳編集・王君宜)
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