日本与野党内では人権外交プロジェクトチームが発足し、超党派議員による日本マグニツキー法制定に向けた動きがある。中国「臓器狩り」問題への日本当局の行動に期待が高まっている。中国共産党による臓器収奪・売買の全廃を目指す日本の有志組織「SMGネットワーク」は設立から3年を迎えた。事務局長を務めるジャーナリストの野村旗守氏は、大紀元に寄稿文を寄せ、活動の軌跡を振り返った。
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中国による国家ぐるみの強制臓器収奪とその売買の即刻中止を求める「中国における臓器移植を考える会(通称SMGネットワーク)」が発足して3年が経過しました。外交評論家の加瀬英明を代表に迎え、日本の政界、財界、医学界、言論界等の有志が集まって結成されたSMGネットワークは、その名の通り、ストップ・メディカル・ジェノサイド「中国の医療虐殺を止める」を目的としています。
団体が設立3周年を迎えたということは、当然のことながら、3年が経過しても当初の目標が達成されてないということを意味します。無論、喜ばしいことでも名誉なことでもありません。しかし、3周年という節目は、これまで私たちが何をして、何ができなかったのかを見直すうえで、良い自省の機会であると考えています。
私たちは、3年前にSMGネットワーク発足式を開いた参議院議員会館ホールを借りて、今冬、3周年記念イベントを企画していました。しかし、世界を覆う中共発コロナウイルスの勢いは止まるところを知らず、周知の通り、わが国でも緊急事態宣言はいまだ解除の目途が立っていません(2021年2月執筆時)。今後の予想が難しいため、SMGネットワークも、同イベントを国会が終わる今春に延期せざるを得なくなりました。
2018年の発足式には、カナダから、この問題の火付け役であるデービッド・マタス弁護士とデービッド・キルガー弁護士(元カナダ政府アジア太平洋地域担当大臣)、そしてイスラエルからは、世界で最初に中国への移植渡航を禁止する法制化を先導したジェイコブ・ラヴィ医師を招聘しました。
2018年1月23日、中国臓器移植の問題について取り組むSMGネットワークの発足会が参議院議員会館で開かれた。マイクを手にするのは、同問題を調査する元カナダ政府アジア太平洋地域担当大臣デービッド・キルガー氏、その右がイスラエルの心臓外科医ジェイコブ・ラヴィ氏、手前は国際人権弁護士デービッド・マタス氏
席上、マイクを握ったラヴィ医師が「中国では何月何日の何時に臓器移植手術の予約ができるという、医療倫理上あり得ないことが可能になっている。移植のために計画的に人が殺されていることの有力な証拠だ」と述べ、会場の聴衆をうならせたことは強く印象に残っています。中国の臓器移植乱用を国際世論に提起している3氏は、日本を発つ前、中国移植医療の犯罪性を告発し、中国への移植ツーリズムに日本国民が参加しないよう呼び掛ける意見書を作成してくれました。
SMGの活動に賛意を示された山田宏参議院議員(自民党)と城内実衆議院議員(自民党)も発足式に参加し、この人類史上未曽有の国家犯罪に歯止めをかけるために、意見を出しました。
山田議員によれば、イベント出席前、麻布の程永華駐日大使から知人を通じて食事の誘いがあり、臓器問題から身を引くようにほのめかされたといいます。議員は発足の準備段階から、この問題に携わっている議員です。
幼年期をドイツで過ごした城内議員は「臓器狩り犯罪は、ナチスのホロコーストに勝るとも劣らない残虐行為。自国の残虐行為から目をそらすために、日本軍による過去の歴史問題を過度に強調している」と指摘しました。
同日には、SMG地方議員ネットワーク(中国における臓器移植を考える全国地方議員の会)も誕生しました。代表世話人(1名)と副代表世話人(2名)の3役に、それぞれ丸山治章逗子市議と、三井田孝欧前柏崎市議、石橋林太郎広島県議を選出しました。全国の県市町村議会から、SMGの趣旨に賛同した地方議員はすでに100名を超えました。また、2019年12月までに、87の地方議会で中国臓器狩り犯罪の阻止や、日本の関与の防止を政府に求める意見書を可決しました。
SMGネットワークは、問題の深刻さを広く日本社会に訴えるため、2、3か月に1度程度の頻度でイベントを催してきました。このなかには、習近平中共政府のむごたらしい弾圧により、民族絶滅の危機に瀕しているウイグル(東トルキスタン)人の在日団体・日本ウイグル協会と共催したものも含まれます。
中国による強制臓器収奪、即ち「臓器狩り」犯罪の最大の被害者は、不当に拘束された無実の法輪功学習者だとされてきましたが、ここ数年、再教育キャンプという名の強制収容所に閉じ込められたウイグル人もまた、犠牲になっているとの情報も出ています。私たちは、共闘する必要があると考えています。
話は、4月以降に延期になった3周年記念イベントに戻ります。今回は、コロナ禍により海外から識者の招聘が困難となりました。窮余の策として、これまで臓器狩り問題の啓蒙のために来日し、活動をともにした何人かの専門家から動画によるビデオメッセージを寄せていただくことにしました。
3周年記念イベントにメッセージを寄せてくれたのは、カナダのデービッド・マタス弁護士、東トルキスタン出身で現在は英国在住のアニワル(エンヴァー)・トフティ元医師、台湾で我々と提携関係にある台湾臓器移植関懐協会の朱婉琪弁護士、そしてドイツから「強制臓器収奪に反対する医師団(DAFOH)」の創設者で理事でもあるトルステン・トレイ医師の4人です。
発足式にも参加してくれたマタス弁護士は、「SMGネットワークが3周年を迎えたことはもちろん祝福すべきことではない。なぜならSMGがいまだ存在しているのは中国の医療虐殺がまだ続いているからだ」と述べつつも、「〝おめでとう〟とは言えないけれど、〝よくやった〟という言葉を贈りたい」と激励の意を示しました。
トフティ元医師は、「歴史的に見ても日本だけが中国に教訓を与えることができる。中国の医療虐殺に歯止めをかけるため、今後ともSMGの活動に注目している」と期待の言葉をいただきました。
中国への移植渡航を禁止する台湾の法改正の先頭に立った朱弁護士からは、「過去数年間、日本を訪れ国会議員や厚労省の担当者と面会し、中国臓器狩り犯罪の危険性を訴えてきた。日本・韓国・台湾は一致して、隣国である中国による人類史上類例のない凶悪犯罪をやめさせなければならない。2019年12月には、3カ国の代表が東京大学でシンポジウムを開催して〝東京宣言〟を採択した。日本政府には一日も早い法規制を望む」と、助言をいただきました。
DAFOH理事のトレイ医師は、「中国は臓器移植医療の国際基準を独占しつつあり、それを世界に押し付けようとしている。これを阻止するためには国際的なネットワークを組織して介入するしかない」と警告を発してくれました。
4名の識者によるビデオメッセージは、4月以降開催のSMGネットワーク設立3周年記念イベントでも紹介される予定です。
執筆者 野村旗守(のむら・はたる)
ジャーナリスト。1963年生まれ。立教大学卒。著書に「北朝鮮送金疑惑」(文春文庫)「Z(革マル派)の研究」(月曜評論社)、編著書に「北朝鮮利権の真相」Ⅰ、Ⅱ(宝島社)など多数。現在SMGネットワーク事務局長。
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