台湾海峡の風雲 【エルドリッヂ氏独占インタビュー】

台湾防衛は時間との勝負 先送りせず着実に行動に移すべき

2021/10/16 更新: 2021/10/16

※ 大紀元エポックタイムズで表明された内容や意見は、寄稿者の個人的見解です。無断転載を堅く禁じます。

台湾問題では、中国共産党は「一つの中国」原則を主張しているが、中華人民共和国は台湾を一度も支配したことがなければ、行政権を持ったことがない。だが、米国は、1970年代、中華人民共和国の「一つの中国」政策に乗ってしまった。より正確に言えば、「中国がそう主張していることを理解している(Acknowledge)」。つまり、台湾が中国の一部であるとの中国の主張を認めているが、無条件で賛同しているわけではない。アメリカは、台湾海峡問題を平和的に解決すべきとアメリカが一貫してとっている政策であり、その後、台湾を守るために、台湾関係法を可決した。

だが、この40年、50年間で、状況が大きく変化してきた。台湾の民主化が進み、その住民のアイデンティティの8割、9割は、「台湾人」になっている。

たとえ自身のルーツが中国本土にあったとしても、自らを台湾人と思っている。ここでの台湾人は民族的なことというより、法的なもの、近代的な民主主義の政体だ。この想いは尊重すべきだと思う。アメリカこそ、その理念を理解するはずだ。イギリス人のルーツがありながら、自分たちの民主主義国家を作ったのだ。

いずれにしても、中華人民共和国が香港で行った弾圧からも分かるように、中国が台湾を占領すれば、同じように、いやそれ以上の弾圧をするだろう。何百万人、1千万人の大虐殺、奴隷化の恐れがある。

ところで日本人の方が台湾に詳しいと思う。中山防衛副大臣(当時)が言ったように、日本と台湾は友達というより、兄弟で、家族だ。問題は、日本に台湾を守る意思があるのか否かである。

台湾防衛は時間との勝負

台湾との関係を増進するためにできることはいくらでもある。例えば、経済協力協定、二国間のFTA、日本がスポンサーとなって台湾のTPP加入を実現することなどだ。

台湾はいま、日本の農作物に一定の輸入規制を課しているが、それを政治的・感情的ではなく、科学的に判断してほしい。台湾と日本は互いにサプライチェーンについて協議することが必要だ。そのほかにも、経済交流や文化交流、研究・教育の交流、相互に留学生を倍増することなども有用だろう。

安全保障面では、クアッドに台湾をオブザーバとして参加させるべきだと思う。そして日本主催の演習にも台湾軍の参加やオブザーバ参加を認めるべきだろう。また、日本の防災訓練に台湾を参加させることも挙げられる。

そのほかにも、相互の閣僚が交流する頻度を高めることや、台湾関係法を作ることなどが有効だ。

ツイッター上ではハッピーな幻想世界を創っているが、現実社会ではまだ長い道のりがある。もっと真剣に連携してほしいと思う。実際、多くの面ではすでにうまく連携が実現している。

姉妹都市を増やすことも考えられるが、とても時間がかかる。今は有事なので、悠長なことはいっていられない。現状から判断して、私は中国共産党による台湾侵攻は4年以内に起きると思う。

日本にとっては時間との勝負だろう。問題を解決しないで先送りすれば山積してしまう。現状の日本は限られた問題にしか対応できない。「パンク」する前に一つでも多くの課題を解決しなければならない。(完)

ロバート・D・エルドリッヂ
1968年米国ニュージャージー州生まれ。政治学博士。米リンチバーグ大学卒業後、神戸大学大学院で日米関係史を研究する。大阪大学大学院准教授(公共政策)を経て、在沖アメリカ海兵隊政務外交部次長としてトモダチ作戦の立案に携わる。著書は『尖閣問題の起源』(名古屋大学出版会、2015年)など多数。

(聞き手・王文亮)

関連特集: 台湾海峡の風雲