自由で開かれたインド太平洋を強調する日米豪印首脳会談 注視する中国

2021/10/14 更新: 2021/10/14

2021年9月下旬に開催された初の対面式日米豪印(クアッド)首脳会談で、4ヵ国の首脳陣は「強制のない」自由で開かれたインド太平洋地域を追求することを誓い合った。これは中国に対して共通の懸念を抱く日米豪印がフロントラインを提示したに他ならない。

「日米豪印戦略対話」を結んでいることで通称「クアッド」呼ばれる主要民主主義国の4ヵ国が米国ホワイトハウスで2時間にわたり実施した会合を、この非公式な戦略的同盟は「失敗する運命にある」と批判した中国政府は警戒しながら観察しているはずである。 

会談後に発表した共同声明でスコット・モリソン豪首相、ナレンドラ・モディ(Narendra Modi)印首相、菅義偉首相、ジョー・バイデン米大統領は、「日米豪印は法治、航行の自由と領空通過権、紛争の平和的解決、民主的価値、国家領土の完全性を支持する」と表明した。

会談では中国への直接的な言及はなかったものの、中国政府への対応が最優先事項であったことは明らかである。 同共同声明で日米豪印首脳陣は、中国が覇権獲得を狙う地域で法治に基づく秩序と行動を推進することを繰り返し主張している。 

同首脳陣は、「日米豪印は一丸となって強制に屈することなく国際法および自由で開かれた規則に基づく秩序を確立し、インド太平洋だけでなく他地域の安全と繁栄・発展を促進することに取り組む」と強調している。 

また、4ヵ国の首脳陣は島嶼諸国、特に太平洋島嶼国の経済的・環境的回復力強化を支援することを再度約束すると表明している。 

さらに同首脳陣は、国際制裁が解除されない限り核兵器・弾道ミサイル計画を放棄しないと断言した北朝鮮にも言及し、同国に非核化交渉の再開を呼びかけた。

 会談後に菅首相が記者会見で発表したところでは、各国はワクチン、クリーンエネルギー、宇宙開発の分野の協力について一致し、首脳会談を毎年開催することでも合意している。 

3月に仮想形式で開催された日米豪印首脳会談で4ヵ国は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン10億回分を製造する共同計画を発表していたが、ハルシュ・バルダン・シュリングラ(Harsh Vardhan Shringla)印外相の発表によると、モディ首相は日米豪の首脳陣に対して同合意に基づき2021年10月末までに800万回分のワクチンの輸出を許可すると話している。

世界最大のワクチン生産国であるインドは、国内での感染症拡大を踏まえてこの4月からワクチン輸出を停止していた。ワクチン輸出が再開された際には、国際的なワクチンイニシアチブ「COVAXファシリティ」の供給対象国と近隣諸国を優先すると、インドは述べている。 

この他にも日米豪印は半導体サプライチェーンの安保強化、違法漁業対策、海洋領域認識(MDA)の改善など、いくつかの新規協定を発表した。 

また、4ヵ国は5G技術提携の発足と気候変動の追跡計画も公表している。 同首脳陣は、「5Gの多様化を実現できる環境の促進という点における政府の役割を踏まえ、官民協力を促すことで2022年にオープンな標準ベース技術のスケーラビリティとサイバーセキュリティを実現するために協力することで合意した」と述べている。

 今回の首脳会談の約1週間前には、オーストラリアが原子力潜水艦を保有できるようにする条項を盛り込んだ安保関連軍事同盟を米英豪が発表したばかりである。

(Indo-Pacific Defence Forum)