中国とブータン、国境協議に関する覚書に署名 「ただの紙切れになる…」専門家は警鐘鳴らす

2021/10/19 更新: 2021/10/19

中国の呉江浩外務次官補とブータンタンディ・ドルジ外相は14日、国境交渉を促進する3段階のロードマップに関する覚書に調印した。中国の外交アナリストは、中国は領土拡張主義を継続しており、覚書はただの紙切れになる可能性が高いと警鐘を鳴らした。

今回の国境協議は、同盟国であるインドとブータンとの間にくさびを打ち込もうとする試みである可能性が高い。専門家によると、この2カ国は、中国が領土・国境協定を締結できていない唯一の国でもあるという。

ブータン王国政府外務省はプレスリリースで、「親善、相互理解、融和の精神に基づくこのロードマップを実施することで、(国境の)境界交渉が双方の納得する形で締結されることを期待する」と述べた。

ブータンと中国は約410キロメートルの国境を共有する。両国は国境画定協議を1984年から24回行ってきたが、2017年、ドクラム高原 でブータンの要請を受けたインドが派兵し、73 日間にわたって中印両軍の間で緊迫した状態が続いた。

呉外務次官補は覚書に調印した翌日、ブータンと中国は「伝統的な」友好国だと主張。「中国は習近平外交思想に従い、ブータンの良き隣人、友人、パートナーとなる」と述べた。

ブータンは中国を信頼すべきか?

ワシントンD.C.に拠点を置くハドソン研究所の長尾賢博士は、ブータンは「中国が信頼できない国だと認識しなければならない」と指摘。「中国は領土問題がなくても領土を拡大している。覚書はただの紙切れになるだろう」と大紀元に語った。

インドに拠点を置くウサナス財団の上級研究員フランク・レーバーガー氏は、中国共産党との交渉はまやかしであると強調した。「時間を浪費させ、ブータンやインドを混乱させ、弱体化させ、(心理的に)影響を与え、操作する」と述べた。

また、ブータンが中国の交渉に一度でも同意してしまったことで、「知らず知らずのうちに中国の内政干渉を招くだろう」と指摘した。「中国は将来、さらに多くの国境地帯を占拠し、同じ交渉術を使うことになる」とし、信頼に基づく覚書への署名は逆効果だと述べた。

中国・ブータン国境紛争

1984年以降、中国とブータンの間で行われてきた国境での領土権争いは、ブータン西部に位置するドクラム地域と、ブータン北部に位置するジャカールンの2つの地域に集中する。中国は1950年代にこれらの地域の領有権を主張し始めた。

2017年のドクラム地域でのにらみ合い以降、中国はブータンの東サクテン地域の領土権も主張。昨年は、サクテン野生動物保護区は「国境協議の議題となっている係争地帯」と述べ、ブータンへの国連開発計画(UNDP)の資金援助に異議を唱えた。

インドとブータンの関係への影響

レーバーガー氏は、14日の中国とブータンとの合意はインドとブータンの間にくさびを打ち込むものだと分析する。「ブータンを継続的に弱体化させ、社会に浸透する中国共産党の戦略作戦だ」と述べた。

いっぽう、中国の国営メディアは、ブータンと中国の国境紛争の解決が遅れているのはインドに原因がある非難した。中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」は、専門家の話を引用して、ブータンは国境問題を 「独自に」 解決する意志があると述べ、インドの印中東部国境における「中国の脅威」の主張に反論した。

長尾氏は、ブータンは巨大な隣国である中国とインドとの連携の維持を望んでいると指摘。インドのブータンに対する影響力は大きいため、「インドの了承がなければ、ブータンは協定を締結することができない」と述べた。また、インドはブータンの安全を確保し支援を必要とするならば、日米豪印による4カ国戦略枠組み「クアッド」に助けと求めるべきだと強調した。

(翻訳編集・山中蓮夏)