欧州議会のラトビア選出のサンドラ・カリニエテ(Sandra Kalniete)議員は9日、議会特別委員会で自身が作成した報告書草案を発表し、EUに対する中国からの干渉について懸念を表明した。
同議員は、欧州議会の「EUの民主主義プロセスに対する外国の干渉(偽情報を含む)に関する特別委員会(Special Committee on Foreign Interference in all Democratic Processes in the European Union,including Disinformation)」のメンバーである。
議員は、中国の対外干渉の目的は「影響力を得るために民主主義の機能を損なう」ことだと指摘した。
「中国からの干渉を監視するタスクフォースがまだ存在しないことは受け入れられない」と述べた。
報告書は昨年9月以来、100人を超える専門家による40回以上の委員会公聴会の内容に基づいて作成された。
報告書は、ロシアの影響力も問題として取り上げられているが、それよりも大きな懸念となっているのは「中国」だ。
エリートの捕獲
「中国がその影響力を拡張するために『エリートの捕獲(elite capture)』に力を入れている」と報告書の中で指摘した。
かつて積極的にフランスでの中国の利益促進に関与したジャンピエール・ラファラン(Jean-Pierre Raffarin)元仏首相や、近年大規模な海外買収を進めてきた中国エネルギー複合大手・中国華信能源(チャイナ・エナジー、CEFC)のために働いたチェコのステファン・フューレ(Stefan Fule)欧州問題担当相らの名前が例として挙がっている。
ラファラン氏の発言は中国官製メディアでしばしば引用されている。
今年4月、中国政府系メディアである中国国際テレビ(CGTN)は同氏の発言を引用し、「欧州と中国は協力しなければならない。中国なしでは未来もない 」と報じた。
2019年、同氏は中国政府より「友誼勲章」を授与された。この勲章は中国に貢献した外国人に授与されるものだ。
国営新華社通信は、数十年にわたり両国関係の促進のために働いたラファラン氏を称えた。
宣伝分野における中国の干渉
報告書草案に記された懸念事項の1つに「中国の国家宣伝」がある。草案は、中国がスポンサーを務めるメディアがいかにして「フェイクニュースを作り配信するか」について暴いた。
今年5月、ベルギーのブリュッセルに本部を置くジャーナリストの国際的な労働組織「国際ジャーナリスト連盟(IFJ)」は、中国が中共ウイルス(新型コロナ)のパンデミック初期に、「偽情報を含むより多くの新戦略を開始した」と警告する報告書を発表した。
IFJの報告書は、2019年に新華社通信と覚書を交わして以来、1日50本の新華社の記事を自社サイトに掲載しているイタリアの通信社ANSAを例に挙げた。
「新華社が編集して、ANSAがその伝播ツールとして機能している」と指摘した。
ロンドンのシンクタンク・欧州外交評議会(ECFR)が最近発表した報告書も、ボスニア、ブルガリア、北マケドニア、セルビアなど欧州の国々では中国メディアの影響力が日に日に高まっていることを指摘した。
メディアの他にも、中国が資金を提供している「孔子学院」の存在も懸念事項となっている。
欧州には約200の孔子学院があり、「同学院は中国の経済的利益のためのロビー活動や、中国の諜報機関がスパイを募集するためのプラットフォームとして機能している」とカリニエテ氏は報告書草案の中で警告した。
(翻訳編集・李凌)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。