フィリピンの補給船が南シナ海の環礁に向かう途中、中国海警局の船から放水を受け活動を妨害された事案で、米国務省は19日声明を発表。中国の動きは「地域の平和と安定を直接脅かす行為だ」と述べ批判した。さらに、もしフィリピン船への武力攻撃があれば、米比相互防衛条約のもと、米国によるフィリピン防衛義務発動を示唆した。
米国務省は「フィリピンの同盟国とともに規則に基づく国際海洋秩序を守る立場にある」とし、南シナ海におけるフィリピン公船への武力攻撃は「1951年の米比相互防衛条約第4条に基づく米国の相互防衛の約束を呼び起こす」と付け加えた。
さらに、中国が南シナ海の海洋権益を拡大的かつ非合法的に主張する行為は、地域の平和と安全を損なうと非難した。
ロクシン比外務長官によれば、フィリピン船が16日にアユンギン礁に駐留する比軍人に食料品を輸送していたが、中国海警局船の放水を受けて、任務を中断せざるを得なくなったという。
22日には、東南アジア諸国連合(ASEAN)中国首脳会議がオンライン形式で開かれたが、ドゥテルテ大統領は南シナ海における放水事案に「このようなことを忌み嫌う。ほかの同様の事案にも深刻な懸念を持っている」と述べ、中国側を非難した。
アユンギン礁は、フィリピンの排他的経済水域であるパラワン州西部の沖合にある。2016年7月の仲裁裁判所の判決は、いわゆる「九段線」と呼ばれる南シナ海全体の領有権を主張する中国の訴えを退けた。しかし、この判決を中国は無視しており、領土争議は続いている。
フィリピン政府は、中国海警局船の3隻の行為を非難し「引き下がるように」と伝え、外交ルートでも「最も強い言葉」で申し入れを行なったという。
中国外務省の趙立堅報道官は22日の記者会見で「中国の主権や利益に挑戦するいかなる企みも達成できない」とフィリピンの訴えを牽制した。仁愛礁(アユンギン礁の中国呼称)周辺海域はおおむね平穏であり「中国とフィリピンはこの件について連絡を取り合っている」と付け加えた。
フィリピンのエスペロン国家安全保障顧問は18日、アユンギン礁とパグアサ島の周辺に中国の海上民兵が以前より多く存在していると発表していた。エスペロン氏は記者団に対し、先週はアユンギン礁に19隻、パグアサ島付近には45隻の船が確認でき「非常に攻撃的」だと表現した。
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