「未来の支配」をめぐる米中AI合戦(1/7)

2021/12/30 更新: 2021/12/30

現代生活のあらゆる側面でデジタル化が進むにつれて、各国の国力は経済のみならずテクノロジー、特に新興技術である人工知能AI)の使いこなす力にますます依拠するようになっている。激しい米中競争による未来はAIを通じてどのような変化をもたらすだろうか。大紀元記者Shi ShanとAnne Zhangは、先進技術をめぐる分析記事を発表した。

人工知能開発が世界を制する

21世紀のIT革命では、人工知能の開発に大きな進歩を遂げる者が世界を支配することになるだろう。

2019年11月9日、モスクワで開催されたAIに関する東欧最大規模のフォーラム「AI Journey 2019」で、ロシアのプーチン大統領は「人工知能は巨大な力を持つ」「それを所有する者は主導権を握り、巨大な競争力を獲得することになるだろう」と述べた。

プーチン氏はフォーラムで、人工知能競争におけるロシアの役割について懸念を表明した。AI競争では、2つの競争相手である米国と中国が他国よりもはるかに先行しているという。

「私たちは、AIの世界的なリーダーにならなければならない。なれると確信している。これは私たちの将来、世界におけるロシアの地位に関わる問題だ」とプーチン氏は付け加えた。

AIの分野では、米国が依然として世界のリーダーだが、中国がその地位を奪おうと急速に動き出している。

10月16日に大紀元の取材に答えた米空軍の元ソフトウェア開発責任者ニコラ・シャイラン氏は「我々はこの戦いに負けている」と述べた。「今すぐ行動を起こさなければ、10年後、15年後には成功の見込みはない」と同氏は付け加えた。

チャイラン氏は、米国が積極的に行動を起こさなければ、10年以内にAI分野で中国共産党体制に対する優位性を失う可能性があるという。

チャイアン氏が述べたAIにおける米国の優位性とは、主に軍事分野のことを指している。しかし、非軍事分野では中国が優位に立っている可能性がある。デジタル監視ビッグデータクラウドコンピューティングなどのAI応用は、中国共産党(中共)が権威主義的な支配体制を強化するために、新疆ウイグル自治区を含む広範囲に渡りすでに実践されている。

中共が権威支配を強化する「新たな手段」

中共は近年、AIの開発を「国家の重要な発展戦略」と位置付けて優先している。プライバシーを度外視する権威主義体制は、市民生活の様々な場面でAI利用を義務付け人々を監視・管理している。さらに巨大な人口を利活用してデータ収集と分析を重ね技術力に磨きをかけている。

中共は、AIの急速な発展を促進するために「中国製造2025」や 「第13次五カ年計画」など、多くの支援政策や規制を発表した。

2017年、中国の国務院は「新一代人工智能发展规划(仮邦訳:新時代AI発展計画)」を発表し、政府が社会を理解しコントロールする上でのAIの意義を強調した。

計画内容によると「AI技術は、社会の大きな流れを正確に把握し、予測し、早期に警告を発することができる。人々の認知や心理的変化を把握し対処決定に役立つ。社会統治の能力とレベルを大幅に向上させ、社会の安定を維持するのに重要だ」という。そして「政府の管理、経済安全保障、社会の安定、そしてグローバル・ガバナンスに大きな影響を与えるだろう」と計画は述べた。

香港の金融・経済コラムニストであるアレクサンダー・リャオ氏によると、中共は、新興技術の人工知能が崩壊寸前の権威主義体制に新たな息吹をもたらすと考えているという。

中共は2013年に「国家統治体系・統治能力の現代化」計画を提案し、5年後の2019年の全体会議で採択した。国営新華社通信によると、この計画は 「中国(共産党)の統治体系をますます完全なものにし、科学的に標準化し、より効果的に運用することを目的とした一連の制度的な取り決めである」という。

中共は2014年に、すべての一般市民の社会的行動を大規模な監視システムと連動させる「社会信用システム」を導入した。顔認証やビッグデータ解析技術を採用し、AIによる大規模な社会統治を開始した。

そのシステムは2020年までに、雇用、教育、融資、旅行券の購入など、ほぼすべての公共サービス分野に組み込まれてきた。この統治方法は中共ウイルスのパンデミックの際に「健康コード」という形で本格的に普及した。

「『統治の現代化』のすべての方策は、中共の権威主義的支配を強化して最終的に全体主義的支配を実現するための基盤だ。すべては人工知能に根ざしている」とリャオ氏は付け加えた。

(つづく)

武田綾香
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