[台北 9日 ロイター] – 台湾の軍事戦略家は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、巨大な隣国中国が武力による占領の脅威を現実に移した場合の戦術を研究している。
中国軍による異常な動きは報告されていないが、台湾当局は警戒レベルを上げている。
ロシアの精密ミサイル使用や、劣勢ながらも考え抜かれたウクライナの戦術は、台湾の安全保障の専門家の間で大きな関心を集めている。
台湾の蔡英文総統は「非対称戦争」を提唱し、車両搭載型ミサイルなどで軍の機動性を高め、攻撃を困難にすることを目指している。
台湾国防大学の中共軍事事務研究所の馬振坤所長は、ウクライナも同じ考えで機動兵器を使ってロシア軍を妨害したと指摘。「ウクライナ軍は非対称戦法をフル活用してロシアの進攻を食い止めている」と述べた。
また、「ウクライナ軍の実績からわれわれはさらに自信を持つことができる」と強調した。
台湾は自らが開発した対戦車ロケット弾「ケストレル」のほかに、中国内陸に到達可能なミサイルも開発してきた。
国防部は先週、今年は年間のミサイル生産能力を2倍以上の500発近くとする計画を発表した。中には中国内陸部の目標に到達可能とされるミサイルも含まれている。
台湾国防部は、国際安全保障情勢を「綿密に把握している」とし、「軍備と防衛戦闘能力を常に向上させる」ために努力しているが、「挑発的ではない」と強調している。
<ウクライナとの違い>
ただ、台湾とウクライナの立場には大きな違いがあり、これが安心感につながっている。
例えば、ウクライナはロシアと長い陸上国境で接しているが、台湾と中国との間には台湾海峡がある。
専門家は、台湾は中国の軍事的な動きの兆候を容易に察知でき、数十万の兵士と船舶などの設備の動員が必要な侵攻の前に備えることが可能とみている。
国防安全研究院のアソシエートリサーチフェローの蘇紫雲氏は、台湾に上陸するには台湾海峡を渡る必要があり、中国にとって「はるかに高いリスク」だと指摘した。
ただ、問題はハード面にとどまらない。
ウクライナ戦争で新たに焦点となった問題で、中国が攻撃した場合に米軍が台湾を支援するかどうかという長年の議論がある。これについて米国は「戦略的あいまいさ」で明確な回答を示していない。
与党民進党で国防・外交委員会の委員を務める羅致政議員は、米政権が先週、ロシアのウクライナ侵攻直後に元政府高官のチームを台湾に派遣したことについて、米国は当てにならないという考えを払拭する狙いがあったと主張。
「海峡の向こう側と台湾の人々に、米国は信頼できるというメッセージを送った」と、党のポットキャストで8日に述べた。
半導体の主要生産国である台湾は、その地理的、サプライチェーンの重要性から、ウクライナとは異なることを望んでいる。
しかし、バイデン政権は繰り返しウクライナへの派兵を否定しており、台湾の一部では不安も広がっている。
かつて大陸委員会副主任を務めた台湾・中国文化大学の趙建民氏は、「台湾の人々は本当に欧米諸国が助けに来てくれると思っているのだろうか」と疑問を呈した。
(Ben Blanchard記者)
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