岸田文雄首相は21日、来日したニュージーランドのアーダーン首相と首脳会談を行った。ロシアによるウクライナ侵略や中国共産党の東シナ海やインド太平洋地域等における影響力拡大を念頭に「外国からの干渉及び威圧」など、基本的価値と原則に対する挑戦の高まりについての懸念を共有した。戦略的パートナーシップを強化し、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現にコミットしていくことで一致した。
会談後に発表された共同文書によれば、両国間の機密情報の相互保護に関する法的枠組みを作り、「機密情報のより切れ目のない共有を可能にするための協定」について交渉を開始することを決定した。
両首脳は、ロシアによるウクライナ侵略は国際秩序に対する深刻な脅威であり、民間人の殺害を含む非人道的な行為を強く非難し、ロシアに即時撤退を改めて要求した。経済・金融制裁を適用することで侵略立案者への代償を高め続けるとした。
共同声明は名指ししなかったものの、中国を念頭に、南シナ海における軍事化、ならびに国連海洋法条約(UNCLOS)と整合性のない海洋権益をめぐる主張や活動に強い反対を表明した。そして、新疆ウイグル自治区の人権状況と香港の権利や自由の侵害について重大な懸念を表明した。このほか、世界貿易機関(WTO)を中心とする多角的貿易システムの強化の文脈では「貿易に関連する経済的威圧並びに非市場的政策及び慣行に対する深刻な懸念を共有」した。
ニュージーランド軍は、近年北朝鮮による国連安保理決議違反である海洋活動やミサイル発射について警戒監視活動を行なっている。岸田氏はこのことを歓迎した。アーダーン氏は、拉致問題を即時に解決するための日本の取り組みに支持を表明した。
外交関係樹立70周年を迎える両国は経済関係、特に食料関連においてもパートナーシップ強化の重要性を再確認した。
アーダーン氏の来日は、中国が南太平洋ソロモン諸島との安全保障協力に関する協定の締結を発表したのちに行われた。中国による南太平洋地域の軍事的影響力の拡大につながるとして、米豪は早々に懸念を表明している。
アーダーン氏もまた「協定がこの地域の軍事化を示唆しているのではないかと懸念を持っている」と述べた。松野博一官房長官は同日の記者会見で、協定締結について「太平洋地域全体の安全保障に影響を及ぼしうる。わが国も懸念を持って注視している」と姿勢を一致させた。
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