[東京 8日 ロイター] – 安倍晋三元首相が8日の選挙演説中に至近距離から撃たれ死亡した事件を受け、政治的暴力や銃犯罪が極めてまれな日本では、知名度の高い人物の警護に対する懸念が広がっている。街頭演説での要人警護について、海外の専門家に意見を聞いた。
<距離の近い親密なイベント>
過去に安倍元首相と選挙キャンペーンに参加したことのあるポール・ネドー氏によると、日本の街頭演説は「私的なイベントに近い」という。
自民党議員の個人秘書を務めた経歴を持ち、現在はテンプル大学ジャパンキャンパス(東京)の非常勤講師を務めるネドー氏は「一般市民が近くにいて、彼らは通常、駅前の広場を埋め尽くしている」と指摘。「不安や危険は全く感じない」と述べた。
奈良選挙区選出の参議院議員、自民党の堀井巌氏は、安倍氏が銃撃された際に隣にいた。安倍氏の街頭演説では党員約15人が聴衆の整理に当たり、警護は地元警察などが担当しており、珍しいことではなかったと述べた。
在任期間最長の総理大臣として、最も影響力のある政治家の1人である安倍氏が最近出席した選挙イベントには、多くの人が集まっていた。その知名度にもかかわらず、ある自民党関係者はロイターに対し、2020年8月の総理辞任以来、安倍氏の警護のレベルは低下している可能性が高いと述べた。
奈良県警は、総理経験者の警護が手薄になるかどうかについて、今後の警護活動に支障を来すとして回答を避けた。
<「厳格」な銃規制>
日本の銃規制は非常に厳しい。
事件当時の写真や映像によると、容疑者は2本の金属パイプを黒い絶縁テープで巻いたような銃で安倍氏を撃った。
元米海兵隊大佐で、日本戦略研究フォーラムの上席研究員であるグラント・F・ニューシャム氏は、今回の事件により日本では政界の要人を巡る警護が強化されるとみる。
英シンクタンク、国際戦略研究所のシニアフェローで、ロンドンに拠点を置くロバート・ウォード氏は「警護に対する疑問が出るだろう。例えば、岸田首相に対する警護の方がはるかに厳重だったことは明らかだ」と指摘。
「ただ、有権者の近くにいることが日本の選挙運動の特徴だ。私は選挙集会に参加したことがあるが、一般市民との距離が近い。もしかしたら今後は変わるかもしれない。そうなれば、残念なことだ」と述べた。
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