インド:中国の脅威を受け、マラバール演習で対潜水艦能力を磨く

2022/11/15 更新: 2022/11/15

専門家によると、多国間防衛演習「マラバール」はインドにとって対潜戦(ASW)や特殊作戦部隊(SOF)などの能力を実証し、テストする機会となる。

また、同演習は、インドの他にオーストラリア、日本、米国を含むクアッドがインド太平洋地域における影響拡大を狙う中国に対抗して結束していることを強調するものだ。

ニューデリーのシンクタンク、国際平和研究センター(International Centre for Peace Studies)の防衛アナリスト、プラティーク・ジョシ(Prateek Joshi)氏はFORUMに対し、「クアッドは主要国間の戦略的結合を示すとともに、中国を主要な敵として特定している」とした上で、

マラバール演習や、国防、外交、技術、気候、健康に関連するその他の多国間活動で、クアッド参加国は、「アジアの覇権国としての中国の正当性を低下させ、中国に行動の変化を余儀なくさせる」と述べた。

近年、インド軍はヒマラヤ国境沿いの領土紛争で中国軍と対峙している。 一方、日本が領有する尖閣諸島周辺海域では、中国船舶が頻繁に日本領海に侵入しており、オーストラリアと米国は中国政府の経済戦争の標的となっている。

インドはマラバール演習で、シヴァリック(Shivalik)級ステルス・フリゲート、カモルタ(Kamorta)級ASWステルス・コルベットおよびP81 ASW航空機を投入する。 この演習は2022年11月8日から18日にかけて、日本の横須賀付近の海域で行われ、他のクアッド加盟国からの派遣部隊がインドと共に演習を展開する。

ジョシ氏によると、インド洋での中国の潜水艦に対する懸念が高まる中でのマラバールの対潜戦訓練は、インドにとって大きな重要性を持つ。

同氏は「中国人民解放軍海軍は2015年8月、対海賊パトロールを装って攻撃型原子力潜水艦(SSN)を配備する能力を示した」とし、 さらに「こうした攻撃型原子力潜水艦は、インドの制海権確立能力に挑んでくる可能性がある」と語った。

中国のステルス攻撃型原子力潜水艦がその時点で配備されたのは戦略的意図によるものだったと、インド海軍のアヌラーグ・バイセン大尉は2022年8月、ニューデリーのマノハール・パリカル国防研究分析研究所に寄せた記事の中で述べている。 こうした艦艇は、対海賊任務などの水上・陸上作戦には適さないことからも、実際には攻撃型原子力潜水艦の長距離パトロール能力を試験するためのものであったとバイセン氏は推測している。

さらに、「中国が、インド洋地域(IOP)における攻撃型原子力潜水艦の長期にわたり検出されずに運用するために必要なインフラストラクチャ、専門知識、必要な指揮統制および通信プロトコルを開発した可能性は非常に高い」と記している。

フランスとのヴァルナ合同演習やイギリスとのコンカン合同演習など、インド海軍が参加する他の海軍演習でも対潜戦訓練が実施されている、とジョシ氏は述べている。

一方、マラバールの特殊作戦部隊訓練は、非伝統的な脅威を抑止し、防御するために、参加者間の相互運用性と情報共有を構築する。 ジョシ氏は「これには、対テロ、人質救出、負傷者の避難、海賊行為対策、避難反対などが含まれる」とし、 さらに「インド海軍は、インド洋におけるこうした不測の事態に対して真っ先に対応することが期待されており、インド洋諸国を支援するためにパートナー諸国と協力している」と述べた。

同氏はさらに、クアッドは全体的に、中国政府が領土を奪取したり、地域の現状を一方的に変更しようとする試みに対する対抗手段として機能し、従来の米国の同盟システムや東南アジア諸国連合などの多国間フォーラムによる取り組みを強化している、と述べ、

「このような状況下で、クアッドのような小規模なフォーラムが新たな抑止方法として台頭している」と締めくくった。

Indo-Pacific Defence Forum